心配される彼女
白石視点

合宿1日目の練習が終わった。いつもの数倍の量の練習に、さすがに体もクタクタやった。みんなもさすがに冗談を言う気力も出ないようで今日はおとなしくなっていた。うーん。俺らから笑いを取るとほんまに普通の人になるな。
風呂に入り終わり、全員で晩飯を食いに食堂へ向かう途中、桜井の後ろ姿が見えた。桜井も今日は走り回っていたから相当疲れとるやろなあ。

ぽん

「桜井、おつかれさん」
「あ…おつかれ」
「おつかれ様優奈ちゃん。めっちゃ疲れたわよねえ。」
「うん…そうだね」
「…あーあかん。疲れてネタも浮かんでこおへん。これじゃあかんな、よしっ。元気出していこっ」

急に謙也がすくっと生気を取り戻し、ずんずんと廊下を進んでいったので、皆も次第に口数が増えていった。
にしても、桜井のやつほんまに疲れてるなあ。…いや、疲れてるというか、


「元気ないなあ、桜井」
「え…?」

桜井は珍しく驚いた顔をしてこちらを見た。しばらく目をパチクリさせた後、他へ視線を泳がし、「別に」と言って歩いて行ってしまった。
ほんまになんかあったんやろか。


「…桜井のやつどないしたんや」
「一氏…」
「元気なかったな」
「お前、わかるんか?」
「そらわかるで。二年も一緒におるんやからな。まああいつめっちゃ分かりにくいけど」


心配やな。そういう一氏に俺は少し驚いた。こいつ、なんだかんだで桜井のことわかっとったんやな。今でこそ俺も桜井の分かりにくい感情が読み取れるようになってきたけど、それはつい最近で。すこし自分が恥ずかしくなった。

桜井、ほんまに何があったんやろか。心配やけど、どうしたらいいのかわからなくて、また自分にがっかりしてしまった。


prev next

bkm
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -