騙された彼女
主人公視点

やっと本格的に練習が始まった。ランニングにトレーニングに素振りに試合にとにかく練習内容は盛りだくさんだった。普段の練習の数倍はあるだろう。運動神経が切れている私には天と地がひっくり返ってもやりこなせそうにない内容だ。

「優奈先輩、私たち球拾いしてきますね」
「あ…うん。」

桜乃ちゃんと朋香ちゃんは働き者だ。自分から仕事を見つけるから偉いと思う。
わたしも早く次のことやらないと、また跡部君に小言を言われてしまいそうだ。
とりあえず休憩に備えてタオルの準備でもしようかな…
私は宿舎の方へ戻ろうとコートから出た。

「優奈センパーイ!」
「切原君…?なんでこんなところに…練習は?」
「まあまあ。どこいくんすか?」
「え…タオルの準備でもしようかと思って…」
「じゃあ俺手伝うっす!」

切原君はそう言うと私の手首を掴んで宿舎の方へぐいぐいと進んでいった。


「ちょ…切原君、練習に戻って」
「大丈夫っすよ!一人じゃ大変じゃないっすか?」
「別に…」


切原君は私の話に聞く耳を持たなかった。でもこれサボりだよね…マネージャーが選手のサボりに加担してどーする…!

「切原君、やっぱり戻って」
「えー、いいじゃないっすか」
「よくないから…っ」

ぐいっと切原君に引っ張られ、彼のと距離が一気に縮まった。あれ…切原君せさなんか身長伸びてない?気のせい…?ていうか、右手がおかしなところへいっている。尻に触っている!なにしてんだこいつ!


「ちょ…っなにを…!」
「やめたまえ仁王君!」

切原君に殴りかかろうとしたその時、後ろから柳生君が駆けつけてくれた。さすが紳士…救世主だ…。あれ?いま切原君のこと仁王君って…


「なんすか、邪魔しないでくださいよ!」
「なにをとぼけてるんですか!まったくあなたという方は…。大丈夫ですか桜井さん」
「え、うん。」

なにがどうなっているのか読み込めず右往左往していると、向こうから切原君がものすごい形相でこちらへ向かってきた。え!切原君が二人いる…


「え、切原君、双子…?」
「ちょっと仁王先輩!!勝手に人の格好してなにしてるんすか!?」
「プリ、本人がきちゃあ仕方ないぜよ」


先ほどまで私の手首を掴んでいた切原君は、急に声が変わり、ずるりとカツラをとって、珍しい銀髪が現れた。え…なにこの状況…


「桜井さん、こちら先ほど行方不明だった仁王君です。ご迷惑をおかけしまして申し訳ありませんでした。」
「あ、どうも…」
「優奈先輩、仁王先輩に変なことされなかったっすか?!」
「え…あー…うん。まあ…」


ケツを少し触られた程度だ。


「あの…仁王君は一体…」
「仁王君は変装が得意なんですよ。今回は切原君の変装ですね。まったく見事ですよ」
「感心してる場合じゃないっすよ!仁王先輩、俺の格好してなにしようとしてたんすか…!」
「プリ。別になんもしとらんぜよ。ただ、赤也の想い人はどんなもんかと思ってのう」
「わ〜〜〜〜!!なに言ってんすか!!」
「ピヨ」


うーん…この仁王君という人…髪型も性格も話し方もいままで会った人の中で一番濃いな…。 仁王君と切原君がじゃれあってるのを見ていると、コートの方から般若のような顔をした真田君がこちらへむかってきていた。うーん。15歳とは思えない…。


「仁王!!貴様練習をサボった上に他校の生徒に迷惑をかけるなどたるんどるぞ!!」
「チッ真田にばれてしもうたか。こりゃまずいぜよ」
「罰としてコートの周りを千周走ってこい!!」

真田君の一声で仁王君はしぶしぶコートへ向かっていった。わたしも早くタオルの準備しないと、休憩始まっちゃう…!


「あの…もう行ってもいいですか」
「ああ、迷惑をかけたな。思う存分働いてくれ」


うーん。四天宝寺が一番子供っぽいと思ってたけど…どの学校も案外同レベなんだなあ。としみじみ感じた。


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bkm
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