理解される彼女
白石視点

あれから、俺はなんとなく桜井のことを目で追うようになった。別に好きやからとかちゃうで。あの時の千歳の言葉が妙に頭に残ったからだ。
表面だけじゃわからない、確かにそうかもしれない。
気をつけて見ると、桜井はほんの少しだけ表情を動かす癖があることに気づいた。
先生がギャグを言うと、みんな爆笑する中無反応の桜井。でも手が口元に添えられている。ウケとるんかこれ…。

桜井の形容詞は無表情で無愛想。みんなが口揃えてそう言うもんだから、俺もそんなもんだと思って桜井をみてしまっていたのかもしれない。
桜井の感情はわかりづらい。だからみんな彼女を知ろうとする前に無表情無愛想などと決めつけてしまうのだろう。
俺は二年間何しとったんやろ…。千歳なんて知りあって数日なのに俺より桜井
のことずっとわかっとるやん。

「俺、部長失格やなあ…」
「何言うとるん白石」
「スーパールーキーにボコボコにされた謙也にはわからん悩みや」
「コラ白石、もっぺん言ってみ!!!」

謙也は幸せもんやなあ。なんて思いながら隣の桜井に目を移す。
ものすごい目で謙也を見ている。謙也のやつほんまにやかましいもんな。


「あ、そうや!桜井これ」


俺はふと桜井への用事を思い出した。



「今度合宿あるねん。これ要項な。準備たのむで」
「わかった。いつから?」
「紙に書いてあるで。えーっと…



明後日。」

「……白石…」


そういえば、桜井の観察しててこの紙渡すのすっかり忘れてた、オサムちゃんから渡されたのいつやっけ…

ものすごい形相で睨む桜井に平謝りして、合宿の準備の手伝いをしてなんとか許してもらったのだった。
ほんまに部長失格やなあ。


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bkm
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