※R15
喪失論
腕の中にすっぽり収まる細い体に緊張して、心臓が高鳴る。
臨也の唇を塞いでいる手から熱が広がって、じんわりと汗ばむのがわかった。
いつもなら一人暮らしをする臨也の家か誰もいない自分の家で行う行為を我慢できなくて使われていない空き教室で行っていた。
服も脱がずに交わって、一度、中に欲を吐き出す。
久しぶりなのもあって、乱暴に扱ってしまったことに後悔していると、近づいてくる足音に気が付いた。慌てて乱れた服を簡単に整えて、掃除用具入れのロッカーに隠れた。
すでに日は落ちて外は暗い。
見回りに来た先生が物音に気がついたのか教室に入ってきて、人の気配を探している。
身じろぎしないよう注意して、その場をやりすごせば、程なくして先生は出て行った。
安堵してロッカーから出るのと同時に、腕の中のぬくもりが離れるのがひどく寂しい……。
密閉した空間で吸い込んだ臨也のニオイにくらくらして、また欲情が湧き上がる。
だから腕を掴んで、もう一度、と乞う。
瞳が揺れるのがわかって、キスをしてその目を塞ぐ。
「いいだろ?」なんて問いかけてるくせに、答えなんて聞かずに押し倒した。
断られるのが怖くて―――――。
この関係の始まりは臨也からだった。ただ単に俺の心を揺さぶって傷つけるのが目的だったんだろう。もしくは、嫌い合っている俺たちがこんなことをすることが背徳的で面白がっているのかもしれない。ノミ蟲が何を考えているのかなんてわかるはずがなかったし、わかりたくもなかった。
きっと、知ればこの関係も終わってしまうから、知らなくていい。
何度となく抱いた体は、もう手放せなくなるほどに俺を酔わした。
今思えば、俺はずっと欲しかったのだ。こいつ自身を。
「やぁ……んっんっ」
声を出さないよう必死に耐えている姿がかわいいと思う。本当はもっと甘い声を聞きたかったから、学校なんかでSEXしたことに後悔した。
「すげぇ、きっつ……!」
穴の中がきゅうっと締め付けるから、まるで俺を欲して、離さないとでも言っているようでうれしくなる。……なんて思って自分でもバカだなと自嘲する。
後ろから突いて、つながっている事実と気持ちいいという快楽に呑まれてこの時間が永遠に続けばいいのに、と願う。
SEXが終われば、またなんでもない関係に戻ってしまうのが嫌だった。
今更好きという感情を伝えたって、その先が望めないのはわかっていた。
きっと、伝えたら最後、この関係も昔の殺し合いをしていた関係もなくなってしまうから。
俺は、この体だけの関係を続けるしか、こいつとつながる方法はないのだと思うと断ち切ることなんて出来なかった。