まわり道 | ナノ
何だこの女?
俺はこの世界の奴等にゴアイサツした事はおろかヒューマノイドモードすら初めてやったんだぜ?なのに何でコイツは俺の事をベクターと呼んだ?ニッコリ笑ってボク零くんでーす!って言う暇すらなかったじゃねーか。

「テメェ何モンだ?俺の何を知ってやがる?」

脅すように女の首を掴んで建物に押し付ける。ただ驚いていただけの女の顔がみるみる恐怖で青ざめて行く。…中々良い顔をするじゃねーか、なあ?

「わ…な…ゆめ…み…やめ…!」
「ああ゛!?何言ってんだか分かりませんねぇ?もっとハッキリ喋れっつーんだよ!」

涙を溜めて強張った顔でふるふると震えるコイツを見ていると楽しくて仕方ねえ。加虐心が際限なく湧いてきやがる。だがじきに本格的に息が浅くなった様子を見て舌打ちをしつつ解放してやる。殺すのは全て聞き出してからだ。この女の他にも余計な事知ってる奴がいるかもしれねえ。
首を離された女は地面に崩れ落ちゲホゴホと汚ねえ音を発する。しっかし、この程度で死んじまうなんて人間てえのはヤワすぎやしねえか?ま、その辺の加減もコイツで実験すんのも悪かねえな。
どっちにしろコイツは監視下に置くべきようだし、当面の宿ゲットォ!ってかァ?




「んで?テメーはその内容も覚えてない夢に俺様の顔と名前が出てきたって言いてえ訳だな?」
「そ、そうです…」

そんなワケでぇ!命の危機から解放してくれた優しい優しいベクター様に感激して快くお家にお招き頂きましてェ!詳しい話をじっくり聞いてやった訳ですがァ!なんとなんとォ!?
クソありえねー。

「作り話にしても面白くねえな、もっとまともな嘘もつけねえのか?」
「だ、だって…嘘じゃ…」
「ふざけんな信じられるか。」
「さっきもその夢のせいで起きて…それでこんな時間に、コンビニに…」


「………」
「………」
「…コンビニって何だよ。」
「え?」


なんかすげえポカーンとされたんですけどォぶち殺してえー!
と俺の殺気が伝わったのかコイツは慌てて説明をした。ようはどこにでもある便利屋ってわけだな。

「これがそのコンビニで買ってきたものなんですけど…ぷ、プリン食べます?」
「プリンって何だよ。」
「た、食べ物です。とりあえず、どうぞ…」

容器に入った黄色いプリンとかいう奴と透明のスプーンを渡された。スプーンくれえは分かるわフェイカーも使ってたしよ。
そのスプーンで黄色いのを掬ってみると何とも言えない感触で思いの外柔らかかったソレはいとも簡単に一口サイズに切り離された。スプーンの上で揺れる物体。ちょ、おもしれえコレ。
んでまあ、ヒューマノイドモードには初めてなった訳で物食うのも初めてなわけだが。初めてのお食事が不味かったら容赦しねーぞこの女ァ…。間抜け面に冷や汗を垂らしつつ俺の一挙一動を見守る女を見返してから、プリンを口へ運ぶ。

…何だコレ…

美味え。




retern


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -