カイトのくせに生意気だ! | ナノ
珍しく今日は一人だ。ドルベは委員会の用事があると言うし、アリトはよくわからん。昨日から宙を眺めては気色の悪い声色でなにかを呟いたりポーズをとったりしていたがそのままどこかへ行ったようだ。ギラグはアリトのお守にでも行ったんだろうな。そしてベクターは居た所で共に行動をするなど有り得ん。

喧噪の中で一人弁当をつつく気にもなれず静かな場所を求めて中庭まで足を運んだ。中庭の先に四阿(あずまや)がある。飲み物でも買ってそこで昼食にしようと自販機に寄れば見覚えのある女がちょうど自販機のボタンを押した所だった。ありふれているようであまりにも希有な光景に、紙パックの落下音を聞いてから歩み寄り声をかけた。

「一人とは珍しいな。」
「あ、ミザエル。そっちこそ皆は?」
「各々所用だ。カイトはどうした。」
「今訳ありで別行動中。」
「なんだ喧嘩か。」
「喧嘩じゃないけど。小鳥ちゃんと食べる予定だったんだけどラブレターもらって呼び出しくらったんだって。」
「それは災難だったな。私はこれから四阿へ行くがお前はどうだ?」

カイトは様々な面で優劣を競いあう私の良きライバルだが、このなまえはそれの幼馴染みだ。カイトが居ればなまえ、なまえが居ればカイトが居ると思っていたがどうやらその方程式が崩れ去る何かがあるようだ。
話せば長くなりますが、とでも言いたげななまえの返答に興味をそそられたのでどうせ私も一人だからと誘いをかける。なまえは「ほんと?いくいくー」とどこかほっとしたように返答をし、紙パックを拾い上げ私に自販機を譲った。


「つまり、その実験とやらにカイトは巻き込まれているわけか。」
「そんなかんじ。言わないでね。」
「態々干渉はしない。が、お前はどうなんだ。」
「私?」
「結局の所、共に過ごすも過ごさないも周りの意見等関係無いだろう。お前の確認の為にカイトを巻き込んでいるのだから無為に時を過ごす物じゃないぞ。」
「ミザエルって大人だなー。そうだよね。でもさ、まだ慣れなすぎて違和感バリバリで、何も考えられないんだよね。」
「私の見解を言ってやろうか。」
「おお、何ですかミザエル先生。」
「少なくとも今は、お前もカイトも互い無しでは生きられん。」
「・・・は?や、何いってんの大げさっていうかカイトなんか居なくても「ムキにならず考えてみる事だ。」

いつものように暴走し出したなまえの言葉をを強い口調で抑え、包み直し終わった弁当を手に立ち上がる。
「私が言ってやれるのはそこまでだ。よく考えろ、カイトは案外短気なのは知っているだろう。」
余計なままごとを続けるよりも何か悲劇が二人を分つまでいつも通りでいろという思いを込めて威勢の悪いなまえの頭を撫でその場を後にした。



せめて実験などと内密に行動せず、そういう思いこそカイト自信に相談しておけばいいものを。相手を思いやるあまりに言えないものだろうか。友とも同士とも違う二人はきっと互いに自然な存在なのだと私は思っているのだが。自然とは人の手が入らない方が美しいものだ。






かく‐げん【格言】
人生の真実や機微を述べ、万人への戒め・教訓となるような簡潔にした言葉。




retern


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