カイトのくせに生意気だ! | ナノ

「なまえ〜!おはよう!」
「小鳥ちゃんおはよう」
私の提案の通りに待ち合わせ場所に来てくれたなまえ。すごく落ち着かなそうにそわそわしているのを見るときっと人生で初めてカイトやハルトくんと別々に登校したに違いないわ。

実験初日でたったこれだけしか経っていないのに既にカイトと離れている不安を隠しきれないなまえに苦笑しちゃう。でも、そんな事を言ったらまた真っ赤になって否定してくるから、どうして気がつかないかなあとじれったさを我慢して他愛も無い話をしながら通学路を歩いていく。
と、なまえが不可解そうに呟いた。

「なんか、景色がちがう。」
「え?」
「一緒に登校する人が違えば景色も違うもんなんだね。」
「そう、かなあ・・・?」
普通そういうのって、初めて好きな人と登校した時とかに感じるんだろうけど。昨日まではこのありふれた町並みがなまえにはどう映っていたのかしら。


そして学校が近くなって来るとやたらと視線が集まった。周りから小さな声で「カイトは?」と聞こえる。いつも一緒の3人じゃないから、なまえの見慣れない登校風景に皆が驚いているのね。それにしてもなまえ達は本当に大変だなあと思う。いつもこの視線の中で過ごしていたなんて、なまえが不満を抱える理由もなんとなく分かった気がする。ただ幼馴染みと登校しているだけなのに、名物がられてたて囃されて・・・。校内に入れば写真まで撮ってる礼儀知らずもいるし。

「なまえ、大丈夫?」
「え、何が?」
「すごい見られてるし・・・。」
「ああ、それは流石に慣れたし平気だよ。小鳥ちゃんこそ大丈夫?」
「・・・居心地は良く無いわね。」
「あはは、良くはないねえ。」
「・・・なんかごめんなさい。」
「いや、周りが失礼なだけで小鳥ちゃんのせいじゃないでしょ、大丈夫。」
「お昼はお弁当のからあげ一つあげる。」
「よっしゃ!」
なまえの単純でこういう切り替えの早さは遊馬に似てる。途中の廊下でお昼の約束をして別れてから、微笑ましくなってつい笑っちゃった。


それにしても、さっきの周囲の騒ぎようを思いだせば、芸能人の恋愛スクープと似ているとも思った。強ち間違いじゃない。だってなまえとカイトはこの学校一の有名人なんだから。


のっけから前途多難な雰囲気の計画に改善点はないか考えながら席につくと、引き出しに見慣れない封筒が入っていた。
「なに、これ?」






しん‐げん【進言】
目上の者に対して意見を申し述べること。




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テーマ「人外ファンタジー」
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