カイトのくせに生意気だ! | ナノ
腐れ縁というヤツは本当にあって、今俺の目の前でハルトの髪を梳かしている女が俺にとっての所謂ソレだ。

俺とこいつみたいのを世間一般では幼馴染みって言うんだろうが、そんな生易しいものじゃない。幼稚園から中3になった今の今まで、学校はおろかクラスさえ分かれた事が無い俺達。おかげで、委員会などの仕事も2人セットにされて押し付けられる。そういう時は決まって誰もが「お前ら仲いいだろ」これを言う。
唯一の救いは家が隣同士では無いという事だ。・・・斜向かいではあるけどな。隣にでもなってみろ、漫画だけの話のような窓から侵入とかなまえなら余裕でやりかねん。

そういう訳で、気持ち的には幼馴染みというよりド腐れ縁だ。


「よし、できた!」
「ありがとうなまえ姉さん。」
「うん、じゃあ学校いこっか?カイトー、準備いい?」
「・・・ああ、わかった。」



通学鞄を引っ掴んで、玄関へ出たハルトとなまえを追う。鍵を閉めてから手を繋いで歩くなまえ達の隣まで来れば、なまえと繋いでいない方の手でハルトが俺の手を握る。
毎朝こうしてハルトを小学校へ送ってから登校するのが俺達の日課だ。微笑ましいだろうが、この送り迎えには問題が一つある。
それは、俺達の通っている学校が幼等部から大学部までの一貫校という事だ。
つまり、この俺達の今の光景を全校生徒が見れるわけで。初めの方は学年問わず色んな奴にからかわれた。すでに学校中の奴らに日課として認識された今でもたまにネタには出されるから困りものだ。

まあハルトを送り迎えしている事に嘘は無いしやめる気もないから俺は話半分に流しておくんだが、なまえの場合そうはいかない。顔をこれでもかと赤くさせて、ムキになって相手を追い回すから、尚更噂の流れが早まる。もう何年目にもなるんだから、いい加減慣れてくれとも思うが。


「じゃあね、ハルトくんまた後で!」
「うん。兄さん、姉さんまたね。」
「頑張るんだぞ。」
「うん、行ってきます。」


初等部の校舎でハルトと別れ、Uターンして中等部の校舎へと向かう。そういえば、ハルトがなまえを姉さんと呼んでいることについても色々ネタにされたな。



別になまえとは周りの奴らが言うような関係じゃない。まあ生まれたときから一緒だっただけあって、一緒に居て楽だし他の女とも違うのは認める。
だとしても別に恋愛対象だとか、付き合うとか、なまえに対してそういった事は正直よく分からん。好意は確かにあるが鼓動が高鳴るかと言うとそういった類いの物じゃない。それに元々の距離が近すぎて付き合うとかも今更だ。わざわざそんな事しなくたってどうせ毎日顔付き合わすんだ。


教室までの道は、知り合いに会わなければ二人だ。斜め下方で揺れているなまえの左手と俺の右手に交互に視線を動かす。きっとこういう時に、手を繋ぎたいと思ったりするとそういう関係になるんだろうが、生憎想像した所で寒気しか感じなかった。

だからやっぱり、俺となまえの関係を言い表す言葉は、ド腐れ縁しかないんじゃないか。






がい‐げん【概言】
大体の要旨を言うこと。また、その言葉。




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