皇帝 | ナノ
得意じゃないと言っていた割に、遊馬くんの説明は丁寧で、わかり易かった。
こんなに上手に説明できるくらいデュエルを熟知しているのに弱いだなんて、強くなるのは知識だけじゃダメんなんだな。


通常モンスターに効果モンスター、アドバンス召喚。融合、儀式にシンクロ、そしてエクシーズ。魔法と罠カードには通常、速攻、永続。装備魔法とカウンター罠。
細かく分けると沢山種類があって、発動のタイミングや使い方が全部違うのにそのうえ一枚一枚に特別な効果が書かれているなんて・・・。
そう考えてみると気の遠くなるような話だけど、実際やってみると案外感覚はすぐに掴めるものらしい。

一緒に頑張ろうぜと応援してくれた遊馬くんに応えるためにも、はやくデュエルができるようになりたい。私だけのデッキが欲しい。
そして、強くなればきっと、あの人に近づく事ができる。


あの人はきっと、私が弱いから・・・一般人だからもう会わないと言ったんだ。
デュエルが強ければきっとまた会ってくれる。認めてもらえればきっと・・・。
傍にいさせて欲しいとは言わない。対等の所に立って、ちゃんとお礼を言いたい。わけもわからないまま家まで送られて、どんな対応をしていいかわからないまま二度と会えなくなってしまって。

彼について聞きたい事も沢山ある。どうしてあんな所で戦っているのか。素顔のままでいる人が大半を占める中、なぜ彼は顔を隠し名前を伏せていたのか。そして一番聞きたいのは、

ー何故、私を助けてくれたのか。

これは一度聞いてみたけれど、納得のいく答えは貰えてない。




「なまえちゃん?」
「えっ?」
「ぼーっとしてたけど大丈夫か?」
「ごめん考え事!大丈夫!」
「ならいーけど・・・着いたぜ!」
遊馬くんに連れられて来たカードショップは、狭いビルの1階がお店になっているこぢんまりした所だった。
お客さんも他に見当たらずガラガラ。でも、おかげでゆっくり見て回れるかな。



「ねえ、遊馬くん?」
「んー?」
「パッケージ見ただけだとイマイチピンと来ないんだけど、どんな種類があるとかわからないの?」
「パックの情報は配信されてるけど、なまえちゃん名前聞いても良くわかんないだろ?とりあえず買ってスグ始められるようなスターターデッキとかストラクチャーデッキ買ってみる方がいいんじゃないかなあ。」
「スターター・・・?」
「最初からデッキが組まれてるセット!デュエルに必要な基本的な魔法カードとかも揃ってるしさ。最初はそれを使ってみて、慣れて来たら使いたいカードを混ぜながら自分のデッキにしてくんだ。」
「なるほどねー、確かに必要なカード揃えるだけでもパックだとすごくお金かかっちゃいそう・・・。」
「何千っていう種類があるもんなー。俺も見たこと無いカードとかいっぱいあるし。」




結局遊馬くんの言ってたスターターデッキって言うのを探して、その中でもお店の人のお奨めっていうごく一般的な初心者向けのものを選んで買ってみた。
遊馬くんがひとパック買って中身を開けてみてるのを見るとちょっとくじ引きみたいで羨ましかったけど、今日はとりあえずこれで我慢する。


お店を出てすぐ、初めての自分のカードが嬉しくて箱を取り出し眺める。
基本的な事は昼休みに教わったし、手に入れたデッキを早速使いたかったから、遊馬くんの「ちょっと試しにやってみようぜ!」という提案に喜んで頷いた。遊馬くんもなんだか嬉しそうに見えた。

Dパッドをデュエル用に展開するのは初めてだったからそれも凄くわくわくした。
私、これから本当にデュエルをするんだ。あの人と同じ事ができるんだ。




デュエル!




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