皇帝 | ナノ
バイクに変形したオービタルで帰宅をしたのは明け方だった。お互い安心感と疲労感で俺達はすぐに眠りについた。
翌日。俺が誤摩化してはいたけど、なまえが連絡をせずにこの家を出ていた事は事実で、なまえは姉ちゃんと婆ちゃんのお説教タイムだ。まあ本人が反省してるのが伝わったのか、それほど長い時間拘束されはしなかった。

説教から解放されたなまえは、早速俺にデュエルを教わろうと必死だ。俺も、もう馬鹿なフリして遠回しに下手な助言する必要がなくなったから大分楽になった。
デッキのカードを強化したいからアドバイスをとせがむなまえに、ふととあるカードを思いだした。

「そういえば、渡せるタイミングが無かったんだけど、これ、なまえに。」
「え・・・?カード?・・・氷結界の、龍・・・トリシューラ・・・。」
「なまえが出てった日の、マーケットの商品だった。お前の氷結界デッキの中のキーカードとしちゃ、最強って言っても過言じゃないぜ。」
「すごい綺麗なドラゴン・・・。それにシンクロモンスターって珍しいんじゃ・・・遊馬くん、いいの?」
「その為にとって来たんだから、使えよ。」
「うん、大事にするね!ありがとう!!」
大切そうに両手で持って、はにかんだなまえに頬が緩む。
なまえのエクストラデッキには少しのエクシーズモンスターと、希望皇ホープ。そしてトリシューラがある。

「さて、シンクロするにはチューナーがいるな。パック買いにいこうぜ。」
「うん!早くシンクロ召喚したい!!」



それからの俺達だが、まず"表"の俺は様子見でいる。口調こそくだけて来たものの、いきなり人が変わったように九十九遊馬が急変するのはどうだろう。どこか別の世界の初代デュエルキングでも無い限り受け流しては貰えないだろう。
成長したように見せながら、どんどん実力を上げて行くのが妥当だろう。それに伴ってなまえも腕が上がってくれば尚丁度いい。

俺達の関係は、はっきり言うと公認だ。変に隠して他の男が近づいてくるのも我慢ならねーし、俺だって堂々となまえといたいからだ。委員長が風化してたのは傑作だったな。

そしてあれからずっと皇の鍵はなまえが持っている。俺のコーチングでデュエルの腕も文句なしに上がって来たなまえが、これから行われるデュエルカーニバルの戦いでナンバーズ使いと当たった時にホープが必要になるだろうから取り憑かれないためだ。
それにしても、アストラルがこいつの周りに浮かんでやがるのは心の底から気に食わない。デュエルに口出しして来るのも相変わらずうざい。それでもまあまあと俺を宥めるなまえも可愛いので今の所は見逃してやる。

カイトの方も色々怪しい動きがあるようで飛び回っているらしい。主催者が一番キナくせえって"表"の大会としてどうなんだよ。
まあ負ける気は正直しないが、今回の大会はなまえを守り抜くっていうもう一つの重要任務もある。決勝で当たるのは俺となまえっていうのがベストだ。そんで俺が勝つ。


「遊馬くん、にやにやしてる。また何か企んでたの?」
「んー、なまえの事だよ。」
顔を近づけてキスを落としてやれば、困った顔で頬を染める。俺はなまえのこの顔がすげえ好きだ。
「また、そういう事すれば誤摩化せると思ってるんでしょ!」
「いや、ホントホント、デュエルカーニバル、決勝で戦おうな。」
「!・・・うん、楽しみだね!」


「ね、遊馬くん。」
「なんだ?」
「私、マーケットで遊馬くんに会えて良かった!」
不意打ちで、なまえからのキスが返って来る。
「・・・お前、それ反則だろ・・・!」
「後悔してないから、これからもよろしくね。」
「当たり前だ、後悔したって離しゃしねえ。覚悟しろよ。」


デュエルカーニバル開催まで、残り3日。




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