皇帝 | ナノ
俺が着席した事で、賞品が運ばれて来る。俺がいない時はどうだか知らねーがそれがいつものブラックマーケットの段取りだ。その流れは今日も変わらない。
ただ、運ばれて来た賞品を見て誰もが目を見張った。勿論俺もだった。

なぜなら、ソレが少女だったからだ。


ここの主は、いつから人身売買にまで手を伸ばしたんだ?いいや、違うな。買って来たモノなわけが無い。攫って来たんだ。
面白いモノって、こういう事かよ・・・。仮面の下の眉間にシワが刻まれる。
彼女は俺の良く見知った"表"の人間だ。そう、"表"の俺のクラスメイトだった。こんな所、一生足を踏み入れるはずの無い人間だ。
賞品の説明がされている中、黙って俺は檻の中で震える彼女を眺めていた。


「では、トーナメント参加の立候補者はお立ちになってパネルにタッチをお願い致します。」
やがて説明の終えた司会は、賞品をかけて行うデュエルの立候補者を募り始める。見慣れぬ賞品に戸惑いながらも次々とトーナメントの出場者は増えて行く。
下心だらけの立候補者共。一人一人の足を折り椅子から立ち上がれなくしてやりたかった。お前ら雑魚が手に入れられるものだと思うなよ。お前らみたいな汚れた"裏"の人間が触れて良いものだと思うなよ。檻を引く男の手すら憎かった。



なまえ
待ってろよ、今俺が自由にしてやる。

俺が玉座から立ち上がると、一斉に場が静まり、やがてざわめきが起こった。なまえも怯えた表情で俺を見た。無表情が崩れないように、それでも努めて優しく見返した。この仮面のおかげでなまえに俺の正体はわからないだろう。
「おや、これは珍しい。エンペラーがカード以外のモノに立候補なされるとは。」
「詮索はいい。さっさとトーナメントを終わらせて俺の対戦相手を決めろ。」
「これは失礼を。それではエントリーが済みました所で、トーナメント表を表示致します。観戦者の皆様は優勝者の予想とベットマネーをDパッドよりご登録下さい。」

ホールにトーナメント表が映された画面が現れる。それを見て観戦者は賭の対称と賭け金を登録し、出場者は中央へ進み出て表の組み合わせ相手とデュエルを開始する。
エンペラーである俺はトーナメントには参加せず、優勝者とデュエルで勝利する事により賞品を手に入れる事ができる。
観戦者や俺は各トーナメント戦の様子をDゲイザーやDパッドで確認できるが、そんな事はどうでも良かった。俺はトーナメントが終わるまでの間ずっとなまえを見ていた。


着替えさせられたのか分らないが、なまえはアイボリーの丈の短いワンピースを着せられていて、空調の効いたこの地下ホールは肌寒そうだった。
なまえもたまに俺の方を向いたが、表情は一向に固く、震えたまま変わらない。
早くデュエルを終らせて腕の自由を解き安心させてやりたい、それだけを考えて、トーナメントの終了を待っていた。



やがて決勝戦が終わり、優勝者が前へ進み出た。漸く俺の番か。
もう少しの辛抱だからな。




こんな雑魚、一瞬で片付けてやる。




retern
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