皇帝 | ナノ
いない

いない、いない、いない、見つからない・・・!

足がガチガチになって、肺がひゅーひゅーいって、喉を通る空気が針のように突き刺すようになるまで走り回ってもなまえは見つからない。
なまえの足よりいくら俺の方が早くたって、探しまわるのには関係ない。

なまえの行方が分からない、それだけで頭が真っ白になり正常な判断ができなくなった。心臓が耳の横で鳴っているかのように大音量に聞こえて俺の思考の邪魔をする。なまえが見つからない、探せ、探せ、何処を?どうやって?どうする?


「・・・ま・・・ゆう・・・ま・・・・・・遊馬!!」
「!・・・なんだお前、まだいたのか・・・?」
「君が皇の鍵を持っているのだから仕方ないだろう。それよりなまえを探すにしても闇雲に遠くまで走りすぎだ。これではもう見つからないだろう。」
「黙れ!見つからないで済まされる事じゃ無いんだよ!」
「かといってこのまま走っていても見つかるはずが無い、もう少し頭を冷やすんだ。」
「・・・・・・チッ」


こんな横から口出すしか能のない幽霊野郎に止められるまでただ走るしか考えられなかった自分に嫌気がさす。俺は能無しか。速攻でカイトに連絡をいれた。


「いきなりどうした(早いな・・・)」
「お前、なまえが何処にいるかわかるか。」
「家にいないのか?この時間だぞ。」
「・・・場所わかんねえのか?発信機かなんかつけてるんじゃないのか。」
「それじゃ犯罪だろ、それにそんな事していたらお前に殺される。・・・つまり、家にいないんだな?」
「・・・さっき、出てかれた。そう遠くへは行ってないはずだ・・・。」
「出てかれた?何かもめ事でも起こしたのか。」
「・・・バレた。」
「な・・・・・・(さてどう反応したものか)」
「ともかく!今はなまえを探せ!何かあってからじゃ遅い!!」
「わかったわかった、じゃあお前は家に一度帰れ、どうせ飛び出してきたんだろうが。捜索は俺に任せて、お前は九十九遊馬としての行動を忘れるなよ。」



あれだけ口煩かったカイトが意外なほどあっさりと電話を切った。何か違和感はあるがまああいつもさっさとなまえの捜索に当たってくれるという事だろ。お説教はその後って事か。
自分で考えても家に一度戻る事が一番だという結果に至ったので仕方ないがとりあえず来た道を戻る。カイトの連れているオービタル7の検索能力は半端じゃない。悔しいがなまえの捜索はあいつに任せておけばそう時間もかからず見つかるだろう。




なまえ・・・俺がこうしているうちにもお前はどこかで俺を恨んでいるのか・・・?
息の整って来たはずの肺の奥で、今度は心臓が痛んだ。
何苦しんでるんだ、なまえを傷つけたのは俺自身だろ。

・・・姉ちゃんと婆ちゃんには何て説明するかな・・・




捜索




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テーマ「人外ファンタジー」
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