皇帝 | ナノ

「ほら、着いたぞ。降りろ。」
「ま、まって・・・!お尻痛い・・・!」
「ったく・・・捕まれ。」

連れて来たのはハルトやハートランドのいる場所ではなく、俺が個人的に部屋を借りているマンションだ。といっても俺自身殆どここに帰って来る事は無い、実質空き家みたいな所。
まさかナンバーズを持っているコイツをあの場所に招き入れるわけにはいかない。かといってこれからするのはファミレスやカフェに入って楽しく談笑するような話でもあるまい。


「で?一体何があった?」
「・・・・・・」
「おい、お前は負けたんだからな。ちゃんと話してもらうぞ。」
「わ、わかってます・・・!どこから話そうか纏めてただけです!」
「まあいい。飲み物でもいれてやるからその間に纏めてろ。」

飲み物を出してやってからやっと始まった話で、皇帝の正体がバレた事が分かった。・・・あれほど気をつけろといったのに。しかもホープまで渡して。
話の節々に出て来る異世界人っていうのがひっかかるが、そいつの話でバレたという事はまあ多分嘘は言ってないんだろう。

成る程な、俺が最初に感じた邪気のないナンバーズの気配は皇の鍵を持った上でのデュエルだったって事か。


「それで?お前は考えもなしにエンペラーの所を出て来たという事か?」
「・・・っだ、だって・・・!」
「だっても糞もあるか。例え嘘を言ってたんだとしてもそれはお前のためだって自分だって分かっているはずだろ。出くわしたのが俺じゃなかったらどうするつもりだったんだ?」
「よくわかんない・・・ショックだったんです。遊馬くんの言ってくれた事とエンペラーさんの言ってくれた事。どっちの何処までが本当で何処までを信じていいのか、もう全然わかんなくって・・・頭の中がめちゃくちゃで・・・。」

頭を整理する時間も必要・・・か。これは無理に引き合わせても何の解決にもならんだろうな。かといってエンペラーに連絡を入れれば来るなと言っても駆け込んで着そうだ。
無断でコイツを匿うっていうのも後が怖いが・・・まあ、仕方がないか。
コイツと居るとため息しか出てこないな。親切な自分にも呆れる。


「今丁度夏休みだろ、ここは俺の家だが大して使ってるわけでもないから落ち着くまで此処に居れば良い。」
「・・・え?か、カイトさんは・・・?」
「俺は他に本拠地があるんでな。たまに様子見には来てやるから好きに使え。」
「でっ、でも・・・遊馬くん家の人にも・・・何も言わず出て来ちゃったし・・・。」
「そう思うならさっさと帰れ。」
「・・・うっ・・・。」
「なるべく早く和解の方法を考えろ。エンペラーにバレでもしたら俺の命が危うい。それが条件だ。」


「カイトさんは・・・どうして私を・・・」「助けてくれるのか?お前そればっかりだな。一々理由がないと助けて貰えないのか?」
「あ・・・いや、別にそういうわけじゃ・・・。」
「まあいい。強いて言うなら、お前が人に世話を焼かせる天才だからだと答えておこうか。」
「なっ・・・そ・・・!」「私生活送るのに世話焼きロボットは必要か?」「いっ、いりませんそんなの!!」
「ならこれが鍵だ。そんなに助けられるのが後ろめたいなら、さっさと出て行く事だな。」



話に着いて来れなくて呆然としているのを良い事に、手をひらひらと降りながら俺はマンションを後にした。これ以上世話を焼かされないように足早にそこを後にした。というより・・・いや、なんでもない。ハルトの元へ急ごう。
再びオービタルに跨がり、今度こそ俺は帰る事にした。




人の女に手を出すのは趣味じゃない




retern
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テーマ「人外ファンタジー」
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