皇帝 | ナノ
先ほど一瞬感じたナンバーズの気配。追っていったらその場所には既に人が居なかった。今回は逃してしまったようだと渋々巡回を続ける。
すると、再び気配が現れた。今度は先ほどよりはっきりとした邪気を感じる。オービタルのハンドルを切り気配の中心へ急いだ。



こんな時間に・・・女が走っている。ナンバーズ所持者に追われているのかと思い近づいてみれば、見覚えのある顔だった。この女、エンペラーの・・・。

「おい」
「・・・ッ!あ、か、カイト・・・さん?」
「こんな時間に何をやってる。」
「・・・カイトさんには関係ないです・・・。」
「お前も懲りない女だな。関係ないわけ無いだろうが、お前にもし何かあればエンペラーが・・・」「エンペラーさんだって関係ないです!」
「・・・は・・・?」
「ほっといて下さい!」
「おい、ちょっと待て何があった。」
「いい加減にして!」

どう考えても様子がおかしい。嫌な予感がして伸ばした腕を振り払われた。その時に一瞬見えた手の甲には確かに39の文字があった。
こいつ、ナンバーズに憑かれている。しかも、39だと・・・!
あの時エンペラーの渡したあの箱だ、あれ以外ありえない。まさかとは思ったがあの野郎本当にナンバーズを、しかも、よりにもよってホープを渡したのか!?



「分かった、俺とデュエルをしろ。お前が勝ったらそのまま何処へなりとも消えれば良い。ただし、俺が勝ったらちゃんと話を聞かせてもらうからな。」
「・・・良いですよ。今の私には負けないカードがありますから・・・。」

やはりナンバーズにとり憑かれている。目が虚ろで、思考能力が普通じゃない。しかし俺もとんだおせっかいになってしまったな。この女は人に世話を焼かせる天才なんだろう。

デュエルモードにフォトンチェンジをし、念のためオービタルに時間を遅らせデュエルを開始した。





「銀河眼にそんな攻撃は通用しない!銀河眼はバトルをする時、互いのモンスターを除外する事ができる!」
「うそ・・・そんなカードがあるなんて聞いてない!ナンバーズが最強なんじゃなかったの!?」
「最強のカードなんて何処にも無い。何かに強い効果があれば、必ず何処かに弱点はある。」

俺がナンバーズを持っていた事にも動揺していたようだが、銀河眼の出現によってそれはもっと大きなものになった。

「バトルフェイズの終わりに、除外された銀河眼とモンスターはフィールドに戻って来る。更に、除外したモンスターがモンスター・エクシーズだった場合、そのオーバーレイ・ユニットを全て吸収し、ユニット一つにつき攻撃力を500ポイントアップさせる!」



デュエルは何の危なげも無く俺の勝利で終わった。てっきり逃げ惑うかと思いデュエルアンカーも使う気ではいたが、あいつは意外と大人しかった。
デュエルには勝った。こいつはナンバーズを持っている。つまり、回収することができる。だが、俺のこの腕では魂ごと抜き取ってしまう。
エンペラーと何があったか知らないが、ここでこいつを廃人にする事は、協力を了承した事への裏切りになる。しかも、その後の俺もただじゃ済まないだろうな。

右手から視線を外し、デュエルモードを解いた。騒ぐオービタルを黙らせバイクに変形させる。


「その便利ロボ・・・初めて見ましたけど・・・」
「こいつの事はいい。いつまでも此処にいたいわけじゃないだろう。場所を移すぞ。オービタル、こいつの分もメットを出せ。」
「カイト様・・・」
「出せ。」
「カッ、カシコマリッ!」
「ほら、お前も後ろに乗れ。」


バイクに乗った事が無いんだろう、戸惑いながら足をかけるこいつを手伝って腰に腕をまわさせオービタルを走らせた。風圧に耐えるため思いっきりしがみつかれた所で、ふと現状をエンペラーに見られたらと考え血の気が引いた。
エンペラーに連絡を入れればすぐ引き渡してやる事はできるだろうが、始めに皇帝の名を出した時のこいつの顔が俺にそれをさせなかった。俺もこいつを甘やかしているんだろうか。




ナンバーズ、捕獲完了




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