皇帝 | ナノ
「大嫌い」


なまえにそう言われた。
こんな時間に外に出たら危ないだとか、出て行かないでくれだとか、そういう考えから追いかける事もできなくなっていた。
誇大表現でもなんでもなく世界が崩れていく音がした。

日に日に拡大していったなまえの存在は、俺の中では留まらず俺の世界そのもののようになっていたようだ。道理で大きいはずだぜ。
なまえを助けたいんだろ。嫌われたってなんだって、なまえを危険なめにあわせないと誓っただろ!理性がそう話しかけているのに、深層心理にいる俺の足がガクガクになっていて走って追うどころか立てそうも無い。


俺は何処で何を間違った?常になまえを守るために、なまえの安全を第一に考えて動いて来たはずだ。俺の部屋を貸したのが悪かった?家に住ませたのが間違いだった?それとも俺が突き放さなかったのが・・・俺がお前を好きになった事が悪かったのか?


「違うな・・・、君の間違いは彼女に過保護になるあまり彼女の気持ちを疎かにした事だ。」
「・・・アストラル。」

そうか・・・こいつが・・・こいつがなまえに・・・

「そんな目で睨んでも私は知らないぞ。私は君がエンペラーという名を使っている事など知らなかった。それに彼女を保護するという意味では君の当て通り一役かったのだ。睨まれるいわれは無い。」
「・・・!そうだ、あの箱をなまえが開けたって事はなまえに何かあったって事だ。何があった!?まさか、ナンバーズ所持者に・・・!!」
「ただの変質者だ。」
「なっ・・・」

変質者だと・・・きっとまた怖い思いをしたんだろう。心で俺を呼んでくれたのかもしれない。なのに俺は駆けつける事ができなかった。
くそっ、俺が今晩マーケットなんかに行かなければこんな事に何てならなかった・・・!今日起こった全てが憎い。今日の賞品であったこのカードも・・・全て憎い。



これ以上最悪な展開にさせるわけにはいかない。
なまえには会わなければ謝る事も話をする事もできない。
ようやく頭の整理がそこまで片付いた所で俺は走り出した。
思い当たるなまえが行きそうな場所なんて無い、ただ闇雲に走った。なまえの事だけ考えて走った。



頭がまだ真っ白の状態だったのかもしれない。カイトに連絡を入れれば探し出せたんじゃないかなんて、その時の俺は考える事もできなかったっんだ。




一寸の亀裂からの決壊




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