皇帝 | ナノ
私が遊馬くんの様子を見に顔を覗かせた時には、部屋はもぬけのからだった。遊馬くんへの道しるべのように揺れる窓に足をかけたのは、ただの好奇心からくる行動では無かったのかもしれない。

「遊馬くん、こんな遅い時間にどうしたんだろう。」

それも、屋根裏からこっそり出るくらい秘密にしたい用事って、なんなんだろう。不安定な足場を、物音を立てないように細心の注意を払って降りて行く。
やっと地面に足がついて、急いで外に回るけど遊馬くんは見当たらない。キョロキョロと周りを見回していると視界の端に物陰が過った気がしてとっさに物陰の方へ走る。


「おやあ?こんな時間に女の子が一人で危ないねえ?」
「・・・っ!」
「お家はどこだい?おじさんが連れて行ってあげよう。」

遊馬くんだと思って追っていた陰は見知らぬ男のもので、いつかの恐怖心がまた背筋を駆け巡る。男は覚束ない足取りでゆらゆらとこちらへ向かって来た。その動きが更に恐怖心を煽り私の心臓がバクバクと悲鳴をあげる。

「お家が分からないならおじさんの所へ来なさい、一人だとあぶないぞお。」

気色の悪い猫なで声が不快感に拍車をかけ、足ががくがくした。
住宅街の夜ってこんなに人気が無いものだろうか、気がつけばこの辺りには街頭も少なく薄暗かった。そして男の周りにはなんだかどす黒いオーラのようなものが見えそうで様子もおかしい。

エンンペラーさん、助けて・・・!
遊馬くんを追っていたはずなのに、脳裏に過ったのは彼の仮面。私は危機感が足りなかったのかもしれない。いつでも彼が助けてくれるという保証などないのに。彼がくれた箱をぎゅっと握りしめた。


「・・・そうだ・・・この箱・・・!」
「どうしたんだい?おじさんと来る気になったのかな〜?」


『もし今後、誰の助けも来ない所で追いつめられた場合は、相手にデュエルを申し込め。それから、箱を開けろ。』この箱を渡してくれたときのエンペラーさんの言葉・・・そうだ、デュエルなら・・・!
男がデュエリストかなんて分からないけど、とにかくこれにかけるしか無かった。

「あの、私とデュエルをしてください!私が勝ったら、そのまま帰って!」
「デュエル?いいねえいいねえ、それじゃあおじさんが勝ったらとことん付き合ってもらおうかなあ。」

全身が震えた。本当に気持ちが悪い。これ、更に状況を悪化させてないよね・・・?大丈夫だよね?エンペラーさん・・・!
ともかくデュエルを申し込むのには成功したので、エンペラーさんの言った通りに箱を開いた。その中に入っていたものは、一枚のモンスター・エクシーズとそして・・・



「何これ・・・?鍵・・・?」




アリスはウサギを追えない




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