皇帝 | ナノ
遊馬くんのお家に居候させてもらい始めてひと月が経った。
遊馬くんは優しいし、明里さんはしっかり者だし、春さんとお話するのも楽しい。皆本当の家族のように接してくれる。
おかげでこのひと月、何不自由無く過ごして来れた。


持ち込みきれなかった私の日用品の買い出しに遊馬くんと出かけたりもした。遊馬くんは思ってたよりも力持ちで、沢山荷物を持ってくれて頼もしかった。
学校帰り、明里さんに拉致されて取材のお手伝いをした時もわくわくした。春さんと夕飯の支度をする時間は私の癒しだ。勉強にもなる。
遊馬くんが美味しい美味しいと食べてくれるのが嬉しくて、お弁当を作るようにもなった。委員長とキャッシーちゃんに怒られたけど、遊馬くんがまた食べたいと言ってくれたので、やっぱりまた作ってしまうの繰り返しで毎日作ってしまう。


デュエルも少しずつ強くなって来て、デッキも少しずつ調整して段々と私の個性が出て来ている。強いカードや便利な効果のカードは手に入りにくいけど、私に合ったカードを皆も考えて探してくれるのが嬉しい。

デュエル。そう、デュエルといえば、あれからずっとエンペラーさんに関するものとは関わってない。約束をしたから探しまわるなんてことはしないけど、カイトさんに助けられた時のように、誰かの視線を感じる事も無い。登下校は毎日遊馬くんと一緒っていうのもあるし、無いに越した事はないけどね。

ただ、時々不安になる。
あの時の事を、エンペラーさんを忘れてしまうんじゃないかって。現実味が無い出来事だし、ほんの一週間足らずの事だったから、記憶自体がふわふわしていて不安定。
それでも、エンペラーさんを肯定するものが今の私にはある。通学鞄に入れていつでも持ち歩いている箱を取り出しベッドの端に置いた。エンペラーさんがくれたこの箱、何が入っているんだろう。これに触れていると、安心する。彼が私を見守っていてくれているかのような、お守りのような安心感がある。
お守りを両手で包みながら、その安心に身を任せていつの間にか眠りについた。



何かの物音で目が覚めた。どのくらい眠ってしまったんだろう、今何時だろう。考える間もなくまた物音が聞こえた。
これは・・・遊馬くんの部屋から?
気になって部屋の角にある階段を登り遊馬くんのいる屋根裏に顔を覗かせてみる。


「あれ・・・?」


遊馬くんがいない。物音は確かにここからした。遊馬くんがこの部屋を出ようと思ったら、私の部屋を通るしか無い。でもいない。
ふと顔を上げると、窓が半開きのまま揺れていた。

「まさか、ここから外に・・・?」




かすかに残った足跡を




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