皇帝 | ナノ
「遊馬くん、遊馬くんったら、起きて!」
「んー・・・んあ?」

「あ、起きた?」
「・・・・・・」
「遊馬くん?」
「・・・ゑ?って、わあああああっ!?えっ、え、え?え?なまえちゃん!?」
「こ、こっちがびっくりしたんだけど・・・朝ご飯できたから、冷めないうちに着替えて降りて来てね。」


なっ・・・は?え?なまえ??
あぶっ、危ねえ・・・!うっかり呼び捨てにするとこだった・・・。寝起きはまずいな・・・し、しかも、なまえ・・・顔近かったし・・・。
寝る前の事が頭を過った。あの時もこのくらい顔を近づけて・・・。

・・・結局何もしなかった。


「俺のヘタレ・・・。」
「え?なんて言ったの?」
「いや、なんでも・・・!起こしてくれてサンキュー!すぐ行くぜ!」

じゃあ下で待ってるから、となまえが部屋を出た。階段を下りて行く音を聞きながら心音を落ち着かせる。つい下半身が気になったが寝起きなんだから仕方ないだろこれは。そういう意味じゃない。生理現象だ生理現象。
・・・ちょっと待て。朝飯?なまえが作ったのか?・・・俺に?
初めてこんな速度で制服着たというぐらい素早く着替えて階段を駆け下りると、配信中のねーちゃんと、奥のテーブルになまえがいた。どうやら食べるのを待っててくれたようだ。


「へえ、遊馬ちゃんと起きたのね。おはよう。」
「お、起きたよ!おはよう姉ちゃん!なまえちゃんも!」
「おはよう遊馬くん。」
「これなまえちゃんが作ったのか!?うまそー!」

テーブルにはトースト、スクランブルエッグにベーコン、サラダと一般的なブレックファーストってやつが並んでいた。簡単なものだが、トーストはこんがりきつね色でいい匂いだし卵は半熟で溶けかけたバターが朝日に当たって眩しい。食欲をこれでもかと誘われた。

「ベタなのでこめんね、朝は和食派とかあった?」
「んーん!なまえちゃんが作ってくれたんならなんでも食うぜ!」
「えっ・・・あ、ありがとう!飲み物何飲む?入れて来る!」
「じゃあ俺ジュース!」


なまえの飯は味も最高だった。ストレートに褒めちぎると気を良くしたようで、慣れたらお弁当も作るねと張り切っていた。無理はして欲しくないが、なまえの弁当か・・・。悪くはない。いや最高だ。
登校もなまえと一緒だし、浮かれ気分最高潮で学校へ向かった。下校も楽しみだから今日は一日機嫌良く過ごせそうだ。それに比例して委員長の視線が痛かったが知った事か。羨ましーだろ、なまえは渡さねえからな。お前じゃなまえを守れない。


ひと月前の俺からは想像もつかないくらい角が取れてしまった。まあ、なまえに絆されれば絆される程、マーケットでの皇帝はピリピリしていくわけだが。
何はともあれ、登下校も休日も殆どなまえとは一緒だろうし、これでなまえが一人の所を・・・っていう心配は無くなった。
安心しろよ、なまえ。
隣で小鳥と無邪気に笑い合うなまえに、視線だけでそう言った。




日没前の安息




retern
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テーマ「人外ファンタジー」
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