ここはどこなんだろう。どうして目の前にエンペラーさんがいるの?
エンペラーさん、笑ってる。優しい顔。でも、どうして?表情がよく見える。笑ってるって、はっきり分かる。
・・・ああ、そっか。仮面をしてないんだ・・・。
でも、おかしいな。表情は分かるのに、エンペラーさんがどんな顔をしてるのか、全然・・・見えない・・・。
「なまえ」
それでもやっぱり、柔らかい顔で笑ってるのは確か。
「なまえ」
あの声で私の名前を呼んでる。私の頭を撫でてくれて、それから、頬を優しく包んで。それから・・・。
ピピピピピピ
「ん・・・。」
目覚ましが鳴ってる・・・起きなきゃ。せっかく夢を見てたのに・・・あれ、でも、どんな夢だったっけ?
なんか良い夢だったような気もするけどどうも思い出せない。仕方ないからとりあえず体を起こして顔を洗いに洗面所へ行く。
「あらなまえちゃん、早いわね。」
「明里さん、おはようございます!」
「おはよう。」
「こんな時間からお仕事ですか?」
「朝は忙しいのよー。」
顔を洗ってリビングに出ると、既に明里さんが数台のパソコンに向かって仕事をしていた。そういえば、記者さんだって遊馬くんが言ってたっけ。
「朝ご飯でも作りましょうか?」
「んーん、朝は食べてる余裕無いのよね。あ、コーヒーおかわり貰える?カップここにあるからさ。」
「はい、すぐ入れますね。」
「ありがと、助かるわ。」
キッチン周りの説明は昨日してもらったし、まあどこも大体変わらないから戸惑う事じゃない。素早いタイピングでモニターをタッチする明里さんにコーヒーを渡してから一度部屋に戻る。制服に着替えたら朝ご飯を作ろう。時刻は6時半。遊馬くんの家からなら8時前に出れば学校には間に合う。
モノレールのラッシュを避けるために毎朝5時起きだった時からすると、全然寝坊できるなー。遊馬くんはいつまで寝てるんだろ。朝ご飯作ってから起こせばいいかな。
庭の掃除をしに出る春さんは朝はもう食べてしまったと言うから、朝ご飯は私と遊馬くんの二人分だけだ。パンがあったからトースターにかけて、スクランブルエッグとベーコンでも焼いて簡単に済ませてもいいよね、朝だし。あ、遊馬くん朝は和食派とかだったらどうしよう。まあいっか。
トースターから電子音が鳴るのを確認してパンを皿に移し、丁度良く半熟になった卵をサラダとベーコンの横に盛りつけバターを乗っける。うん、完璧!
「いい匂いね〜、両手が塞がってなかったら私が平らげたいくらいだわ。遊馬にはもったいない!」
「あはは、私遊馬くん起こしてきますね!」
「寝ぼけて襲われたら呼ぶのよー。」
登りかけの階段の途中でついコケそうになってしまった。あ、明里さんたら・・・!
気を取り直して、私の部屋を通り抜け遊馬くんの寝ている屋根裏へ登る。
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