ごめん。
「やっぱ、俺は人を信用できないみたい」
ごめん、と彼は伏し目がちの瞳に悲しい色を浮かべて微笑んだ。
―悲しい
信用できないと言われたことが悲しかったわけじゃなかった。
だって、彼が人間不信に陥った経緯は知っているしそれが未だに完治しているわけではないこともわかっている。
しかし、彼が悲しい顔をしているのが辛いなんて格好のいいことを言うつもりもなかった。
「しろーさん、俺は」
「ごめん!!」
その一言だけの悲痛な声色は他に何も言ってもいない。
だがそれは明確になにも聞きたくない、と叫んでいた。
―ここで、言葉をかけることが出来たら。
そんな出来やしないことを考えて何になるのだろう。
『出来ないことを考えなかったら、世界は出来ることばかりだよ?』と昔彼が言ったのを不意に思い出した。
「すいません、俺には無理です」
―君の支えには、きっとなれない
彼が出ていって、誰もいなくなった部屋でぽつりと言葉が手の甲に落ちた。