06 

 一方焔も、エリカに事情を話し終わっていた。

「変な穴…か。もしかしたら、時空の裂け目に巻き込まれたのかもな…。」

 エリカの推測に、焔は首を傾げた。

「時空の裂け目?」
「…あぁ。さっき現れた狼の魔獣たちがいただろう? アイツらは、実はこの世界のものではないんだ。と、なると…」
「他の世界から来た…。」
「そうなるな。」

 説明を終え、溜め息を吐くエリカ。
 その裂け目に人間が迷い込んだとなると、当然始末は出来ない。つまり、元の世界へ返さなければならないことになる。
 どうするべきか、エリカは頭を悩ませていた。

「俺たち、帰れる…よな…?」

 不意に、元の世界のことや、樹理のことを思い、焔は不安げに呟いた。
 それを聞き、エリカはまた溜め息を吐いた。

「当たり前だろう。私たちが必ず帰す。だから、そんなに不安そうな顔をするな。」

 そう言って、エリカは微笑んだ。

「…あぁ。」

 それにつられてか、焔も柔らかく笑った。

 その時――



「あれ、エリカ?」



 ガサリ、と草原が音をたてたと思うと、そこからは見慣れた顔が現れた。…エミだ。

「エミ…。お前今までどこに…?」
「それはこっちの台詞ですよー…。」

 さらに、エミの後ろからはパートナーであるフランが現れる。そして、

「焔!」
「樹理!」

 フランの隣に立つ緑髪の少女―樹理を見て、焔は真っ先に駆け寄った。

「良かった…。怪我はしてねェか?」
「ん、大丈夫。焔は?」
「俺も大丈夫だ…。無事で良かった…。」

 ほっと表情を和ませる二人に、エリカたちも、ほっと落ち着いた。

「ところでエリカ、話は聞いた?」
「もちろん。そっちは?」
「聞きました。やっぱり、時空の裂け目ではないかと…。」
「私もそう思った。エミは?」
「ビンゴ。あたしもよ。みんな同じ考えでいいわね?」

 三人は互いに目を合わせあった。





「交差するはずのない世界が、交差してしまったな…。」





 そんなエリカの呟きは、森の奥深くに埋もれた――…。



end


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