05 

 三人は歩き出した。

 樹理の連れの焔と、迷子のエリカを探す為に。

「あ、紹介が遅れたけど、私はエミ。この世界では騎士として働いているんだよ。」
「僕はフランです。い、一応エミのパートナーをやってます。」
「そう、一応、ね。一応。」

 “一応”という言葉に、樹理は首を傾げた。

 …さて、お互い紹介が済んだところで、たわいない会話をしながら歩いていく。
 自分の世界、そこにいる仲間…思い出。
 話していくうちに、三人の間には、少しずつ小さな絆が生まれていった。

「そういえば、樹理ってさ…」

 エミが何かを言いかけた時だった。

「! エミ!」
「分かってるって! 樹理、下がって!」

 不意に叫んだフランに、エミが答えた。二人は樹理を庇うように前に立つ。

「な、なに?!」

 三人の前に立ちはだかっているのは、体長五メートルはあるであろう巨大な白熊。
 足元から青白い焔を出しているところからして、普通の熊でないことは確かだ。

「じゃ、サポート頼むよ。」
「はい。」

 そうフランが頷くと、熊の周りを小さな竜巻たちが取り囲む。これで熊に逃げ場はない。
 自分の武器である巨大ハンマーを構えるエミの隣に樹理も立った。それを見て、エミもフランも驚きに目を見開いた。

「樹理、危ないから下がってて。」
「私だって戦える!」

 ぐっと拳を握る樹理を見て、エミは一瞬驚いた顔をした後、ニコッと笑う。

「無理は止めてね?」
「うん!」

 大きな唸り声を上げて襲いかかってくる巨大熊。

 エミはハンマーを構え、樹理は腕を前に出して目を閉じる。



「「はァッ!」」



 エミと樹理は同時に一喝する。

 すると、地面から根っこが突き出し、巨大熊に巻きつく。

 身動きが取れなくなった熊に、大きくジャンプしたエミが、頭のてっぺんを思い切りハンマーで殴る。

 脳みそがシェイクされた熊は、間抜け顔でフラフラと揺れる。
 そこへ、トドメとばかりに、巻きついていた根が鋭くなり、熊を襲う。
 エミが着地するのとほぼ同時に、熊は大きな音をたて、ゆっくりと倒れた。

 それを見て、フランは盛大に拍手を送った。

「さっすがー!」
「樹理様、お強いですね…。」
「私なんてまだまだだよ。もっと強くならなちゃ…。」

 そう呟くと、樹理はぐっと拳を握った。

「やっぱり樹理は強いよ…。」
「え?」

 不意に呟かれたエミの言葉に、樹理が振り返った。それに対し、エミは「なんでもない。」と答え、また歩き出した。

 すると、珍しくフランが沈黙を破った。

「エミ、一度騎士団本部へ戻ってみてはどうでしょうか? もしかしたら、エリカさんと合流した焔様がいるかも…。」

 そんなフランの提案に、エミは頷く。

「確かにね…。そっちの方が手っ取り早いか…。樹理、それでいい?」
「うん!大丈夫よ!」

 樹理の同意も得たフランたちは、ひとまず騎士団本部へと向かうことにした…。


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