03
「うわっ?!」
自分の頭に冷たいものが浴びせられ、思わず驚きに声を上げる。
それと同時に、辺りに広がっていた炎は一瞬で消火された。
「おい…。」
不意に背後から聞こえた低い声。どうやら女性のもののようだ。
「これは貴方がやったのか?」
「え?」
振り返れば、そこに立っていたのは驚きに、目を見開いている黒髪の女性。
彼女の青い瞳からは、「信じられない」という色が混じっていた。
「…貴方は何者だ? 服装からして、この国の人間ではないな?」
「それは俺の台詞なんだけど…。お前こそ何者だ?」
「は?服装を見て分からないのか?」
いまいち噛み合わない会話に、焔も目の前の女性も頭を悩ませる。
兎に角ここは、話題を変えようと、焔が口を開く。
「とりあえず、俺は焔っていうんだ。お前は?」
「あぁ、紹介が遅れたが、私はエリカだ。星翔騎士団蒼ノ騎士、エリカ・ブルースターだ。」
「星翔騎士団?」
聞いた事のない単語に、焔はさらに頭を悩ませる。
そんな焔を見て、エリカは「ふむ…。」と小さく頷いた。
「何やら事情でもあるのか…。焔、とりあえず着いてこい。星翔騎士団本部まで案内しよう。ここは危険だしな。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺、仲間とはぐれたんだ! えっと、緑の髪の女の子なんだけど、見てないか?!」
“危険”という言葉にはっとして、焔は矢継ぎ早に訊ねた。
確かに樹理は強い。だが、さっきのように見たこともない生物が現れたら…。
危ない目にあっているのではないかと、不安になったのだ。
しかし、驚いたのはエリカである。
「お、女の子?! この森に1人でか?!」
「あぁ…。」
「ったく…。悪いが、私は焔以外とは会っていない。早く探さないとな…。手伝ってやるから、その子の特徴を頼む。」
「!いいのか?!」
「勿論だ。それに、この森については、お前より私の方が詳しいしな。」
エリカの言葉に頷きながら、焔は自分たちが巻き込まれた事件、それと、樹理のことを説明した…。