03 

「こんなところで何してんの?」

 聞き覚えのある、呑気な声がした。
 その声に、エリカたちはすぐさま反応し、スッと背筋を伸ばした。
 声の方には、長髪で金髪の男が立っていた。その男もエリカたちと同じような格好なので、騎士団の一員なのだろう。
 そんな男に、エリカは冷静に話し出す。

「実は、先ほどの任務中の事で少しお聞きしたい事がありまして。」
「時空の狭間? で、見覚えのない人がいるんだけど、誰?」

 男は、焔と樹理を指差して首を傾げる。それにエリカは頷く。

「はい、その件です。それで、彼らはその時空の狭間を使い、異世界から来た者たちなのです。…焔、樹理、こちらはリムーザ・ラロシュ様。私の上司に値する人だ。」
「あぁ、俺は焔だ。よろしくな。」
「私は樹理! よろしくお願いします!」
「うん、よろしく、樹理ちゃん。」

―― 今、俺の事を無視した…?

 樹理にだけ握手を求めるリムーザに、焔は首を傾げた。それと同時に、沸々と怒りも沸いてきた。
 そんな焔の肩に手を置き、エリカが慰めの言葉をかける。

「すまない焔…。リムーザ様はああいうお方なんだ。まぁ気にするな。」
「なんだかなぁ…。」

 相変わらず、リムーザと樹理の会話が続く。どうやら、樹理が今までの事を説明しているそうだ。リムーザはこちらに見向きもしない。恐らく焔の事は眼中にないのかもしれない。
 やがて、納得したように頷いたリムーザが、エリカたちのところへ来た。

「詳しい事情は分かったよ。オレはこの任務に参加してないから、あまり勝手な事は出来ないけど、樹理ちゃんのお願いなら仕方ない…。」
「いいから、早く言って下さい。」
「はいはい…。えー…この任務に、樹理ちゃんの参加が決まりましたー!」

 沈黙。

 唯一盛り上がっているのは、恐らく言い出しっぺである樹理と、それを許可したリムーザである。
 そんな周りの空気を気にせず、リムーザが続ける。

「じゃあ三人とも頑張ってね。」
「…リムーザ様、焔とフランも合わせて五人です。」
「んー…そうだっけ? まぁ怪我したらオレのとこにおいでよ。看病してあげるから。」
「キノ様のところに行きますので、気にしないで下さい。」

 淡々と会話をするエリカたちを横目に、クラムが溜め息を吐いた。

「はぁ…。お気の毒ですねぇ、焔お兄様。」
「余計なお世話だ。」


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