02 

「お帰りなさいませー!!」
「うわッ?!」

 "自動"というシステムに関心している焔に、いきなり誰かに抱きついた。
 その人物、否水色の髪の少女は、戸惑う焔に構わず、ゆるゆると体中を撫で回す。

「お、おい…ッ!」
「んー? なんか硬い…。男体化ですかぁ?」
「…こっちだ。」
「んにゃ゙ッ?!」

 首を傾げる少女の頭を、エリカが思い切り殴る。ゴンっという痛そうな音と共に、少女は焔から離れた。

 「うぅぅ…」と唸りながら、紫色の瞳に涙を溜め、殴られた頭を押さえている。

「酷いです…。酷いです…。王子様は暴力禁止…。」
「酷いのはお前だ。そして王子じゃない。」

 何やら長そうな言い争いを始めるエリカと少女。
 そんなエリカに代わり、エミが少女を紹介する。

「えっと、あの子はクラム。エリカ大好きなメイドちゃんだよ。」
「はい、クラムです! ようこそ旅人諸君!」

 いつの間にか立ち直ったクラムが、焔たちにビシッと敬礼する。普通のメイドは敬礼なんてしない。

「そ、そうか…。紹介が遅れたけど、俺は焔。で、こっちが樹理。」
「よろしくね。」
「はい! よろしくお願いします!」
「クラムは騎士じゃないのか?」
「さっきから言ってるじゃないですかぁー。クラムはあくまでメイドですよぅ!」

 なんやかんやで紹介を終え、少しずつ意気投合し合う三人。そこに、さっきまで黙っていたフランが入る。

「えっと…とりあえず、何か知ってそうな方のところへ行きませんか? 帰り方が分かるかも…。」
「ふむ。そうだな…。焔、それでもいいか?」
「あぁ。あっちの世界でやらなちゃいけない事もあるし、俺たちも早いとこ帰りたいしな。」

 フランの提案に続いたエリカの問いに、焔が同意する。もちろん、樹理も同じ気持ちだ。

「そこはリムーザ様でしょ! だってこういうの詳しそうだもん!」
「いや、あの方は駄目だ。ルルー様にしよう。」
「ルルー様は何も知らなそうな気が…。キノ様なんてどうでしょうか?」
「うーん…。」

 それぞれ尊敬する上司の名前を上げるが、失礼なことに、どれもしっくりこない。誰一人物知りなイメージが湧かないのだ。
 そもそも、上げられた三人はこの任務への参加を放棄しているのだ。忙しいとかなんとか理由を付けて。この三人、基本地味そうな仕事は受付けないらしい。

 どうすればいいか悩んでいた、その時――


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