竜は全部で6頭。しばらく様子見姿勢で動かないエリカたちに、竜たちが唸っている。

 やがて、この状況に痺れを切らしたのだろう。

 不意に一頭の竜が、甲高く鳴き、カルに襲いかかった。

 エリカは直ちに水の壁を作り、防御を取ろうとするが、それよりも先にカルが動いた。

―― 速い…ッ!

 意外なスピードに、エリカは驚きに目を丸くした。
 カルはすかさず、その大剣をふるう。
 竜の腹を切り裂き、血が頬に飛ぶ。それを拭い、カルはニヤリと笑う。

「弱い奴ほどよく鳴くんだぜ? さっさと来いよ。」

 それを合図にか、今度は一斉に襲いかかってくる。
 それでも、爪を、牙を、炎をかわし、カルは黙々と竜を斬りつけていく。
 その様子に、エリカは思わず息をのんだ。いつもの様子からは想像がつかないほど、今のカルは勇ましく、そして美しく見えた。

 だが、竜だって馬鹿ではないのだ。

「ッ!」

 背後に回った竜が、爪を振り上げる。

 が、その爪がなぜかカルに振りかからなかった。その代わりに、背後にいた竜はその場に倒れた。

「すきだらけ。」

 クロハがすかさずフォローに入る。
 背後を取っていた竜に弾丸を撃ち込む。

「誰が隙だらけだ、誰が!」
「アンタしたおらんやろ、この間抜け。」
「はぁ?! お前なんて遠距離攻撃しか出来ない能無しだろッ!」
「あ゙?!」
「やめろ、お前ら!」

 エリカが怒鳴り、二人の前に立つ。

「任務中だ馬鹿者。」
「悪いのはカルやもん。すぐキレるし。」
「何でいっつも俺なんだよ! 知ってるんだぞ?! お前が毎晩」
「それ以上言うたらどつくぞ!」
「おい、来るぞ。」

 三人は余裕の会話を続けたまま、竜を迎え撃った。

 エリカも戦う。

 トラウマを振り払うように、無心に鎌をふるった。

 仲間と一緒なら大丈夫、と。



――――…
 間もなく、勝負はついた。

 三人の周りには、息絶えた竜が横たわっていた。

TOP