フランのお陰で、少し軽くなった足取りでオルホスの部屋へ向かい、辿り着いた。

 他の部屋よりも大きく頑丈なドア――というよりは、扉という表現が合っているだろう――は、蒼ノ騎士団を表すように、真っ青に染め上げられていた。

 コンコン、とノックをすると、中から「はーい。」という軽い返事が返ってきた。

 しばらく待っていると、その扉が開かれた。

「いやー、ごめんごめん。片付けしてたら遅く……ってあれ?エリカじゃん。」

 出てきたのは、長く真っ直ぐ伸びた金色の髪に、綺麗な水色の瞳を持つ男。
 その整った顔立ちは、まさに美男と呼べる男だった。

 そう、この男こそが、蒼ノ騎士団のオルホス―リムーザ・ラロシュだ。
 彼が持つシューラは蟹。巨大な扇を武器に、戦うシューラだ。

 そんな彼は、ポリポリと頭を掻きながら問いかける。

「んで、なんで今日の集いに来れなかったの?」
「はい。私もその事を謝りに参りました。」

 エリカはその場に跪き、「申し訳ありませんでした。」と謝罪の言葉を述べた。

 それを見てもリムーザは、眠そうに目をこすり、大きな欠伸をする。相変わらずのマイペースだ。

「ま、別にいいけどねー。……それより、来たのはエリカだけ? エミは?」
「あぁ、エミは朝から体調が崩れておりまして…。今部屋で休んでいます。」
「あぁ、そう。分かった。わざわざ報告ありがとう。」

 チョイ、と手を下から上へ動かし、エリカの顔を上げさせる。

 また大きな欠伸をし、部屋の中に戻ろうとしたリムーザは、スッと立ち止まり、エリカの方へ振り向いた。

「あ、それと、」

 そして、ニッコリと笑うと、念を押すように、ゆっくりと…。

「お酒は飲んじゃだめだからね…?」

 パタン。と静かに扉が閉まった。

 やっと重い空気から解放されたエリカは、ずるりと壁に寄りかかった。

「全てお見通し、ってわけか。」

 エリカは引きつった笑みを浮かべて、そう呟いた。

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