「それで、任務の内容は?」
すっかり気持ちが冷めてしまったエリカが、ルルーに問う。
ルルーは「んんー…」と考え込んで一言。
「忘れた。」
その一言に、エリカは目を丸くする。
「わ、忘れちゃったんですか?」
「いやー、本当に思い出せねぇや!」
ボリボリと頭をかきながら、ルルーは豪快に笑った。
すっごくマイペースな人だな…と思いながら、エリカは溜め息を吐いた。
すると、さっきまで完全に無視され続けていたリムーザが口を開いた。
「ラビーネって村は知ってるかい?」
「あぁ、はい。」
エリカはその村の名前を知っていた。
「ラビーネ。ここよりさらに北に進んだところにある村。ほぼ一年中雪が降り積もっているんですよね。」
「さすが、正解だよ。ただ補足すると、最近原因不明の雪崩の被害にあっているんだ。まぁ小さい雪崩だけど、村の人はすごく困ってる。だから、」
「その原因を調べろ、ってことですか。」
「あはっ、また正解。」
ただ原因を調べるだけの任務だったが、まだビアスになったばかりのエリカは、少し不安だった。
なぜなら、自分の助っ人として呼ばれた人間が、オルホスであるルルーだったからだ。
ただリムーザとルルーが親しい仲だっただけかもしれないが、エリカはどうしても不安を拭えなかった。
「んじゃ、さっそく行くか!」
そう言って、ルルーは大きく伸びをした。そして何かに気づいたように、「あ、そうだ。」と呟くと、エリカに向き直った。
「はい。これ、エリカの。」
渡されたは、どこに隠し持っていたのか分からない、大きな鎌だった。
エリカはその鎌を受け取ると、光り輝いている鎌の刃を見て、驚いた。
「これ…。」
「へへっ、あたいの友人に研いでもらったんだ!」
得意げに言うルルーに、エリカは「いつの間に…」と呟くと、ふっと笑みを零して、愛おしそうに刃を撫でた。
この鎌はエリカがローイの頃から愛用しているものだった。
最近は戦闘の任務が少ない為、しばらく放置していたが、まさか綺麗な状態で久しぶりに見る事になるとは……。
しかし、武器が用意されるという事は、つまりそういう事なのだ。
はぁ…、と深い溜め息を吐いた時、ふわりと優しく頭を撫でられた。
上を見ると、笑顔のルルーがいた。
「んな心配そうな顔すんなって。」
ルルーは笑っていた。
今のエリカを励ますように。
「あたしが絶対守る。 約束だ、エリカ。」
そう言うと、ルルーは拳を突き出した。
その拳に自分の拳をぶつけ、エリカは大きく頷いた。
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