やっとの思いでホールに到着したエリカたち。
 すでに整列している騎士たちを見れば、たぶんギリギリだったのは確かだ。

「あ、エリカ! こっちこっち!」

 後ろの方へ並ぼうとした時、ふいに、聞き慣れた声に呼ばれる。
 その声の方を見ると、そこには手招きをするエミがいた。

「あぁ、エリカ…良かったぁ…。今日起こせなくてごめん……って、フラン?!」

 フランと共にエミのもとへ行くと、フランを見たエミがこれまた大袈裟に驚いた。

 かと思うと、急に畏まって頭を下げた。

「あの、この前はごめん…。」
「あ、いや、えっと…僕の方こそ…。この前はごめんね…。」

 二人の言うこの前とは、フランがエミの額に手を当てた事に驚いたエミが、思わずフランを蹴り上げた事だろう。

 後の事はよく分からなかったが、どうやら、まだ謝っていなかったらしい。

「おーい!そこ! 早く並べー!」

 二人が謝り合っているその時、大きな声にそう言われ、その場に並んだ。

「何だろうね?」

 右隣に立っていたエミが小声で問いかける。
 それに対して、エリカは肩をすくめて答えた。

「さぁね。まぁ穏やかじゃない事は確かだな。」

 しっかりと並んでいる騎士たちの前には、オルホスたちが立っている。彼らが放つ張りつめた空気をびんびん感じた。
 何かが起こった……そんな雰囲気。

「はぁ…。全員参加の任務とかだったらマジ勘弁だわ…。」

 いつ間にか左隣に立っていたカルが溜め息混じりに呟いた。
 エリカは、そんなカルのそばに彼がいない事に気づき、辺りを見渡してから問いかけた。

「カル、今日アイツはいないのか?」
「あー…、たぶんまだ寝てる。無理やり起こすと怒るから置いてきた。」

―― 置いてかれても怒ると思うが…。難しいな…。

 カルの答えに、エリカは苦笑いを浮かべ、これ以上追求しない事にした。

 すると、



「静粛に。」



 よく通る、凛とした声がホールに響き渡った。

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