また昔の事を思い出した。
 あの日、あの瞬間から、エリカは本当に涙を見せた事がない。
 それが彼女の決意の証であり、、騎士になるための代償であったからだ。

「私も随分と変わったな…。」

 あの時の無邪気な自分を思い出し、思わず笑みが零れる。
 しみじみと過去に浸っていると、突然頭にチョップを打たれた。

「いッだ…!」

 頭を押さえながら振り向くと、そこにはハットを被った赤毛の青年が立っていた。

「よっす! エリカ!」
「カル……ッ。」

 チョップした相手である赤毛の青年を、エリカは鋭く睨む。
 しかし赤毛の青年―カルリエド・カルリドはまったく気にしていない様子で言った。

「お前がなかなか来ないから迎えに来たんだよ!」

 さらに、そんなカルの後ろからエミがひょっこりと顔を出す。

「そうそう。エリカを祝うパーティーなのに…ね。主役がいないなんてツマラナいじゃない?」

 エミが嬉しそうに笑うと、エリカの表情も自然と柔らかいものに変わっていく。

「んじゃ行こうぜ! 広場まで競争ー!」

「あぁ、待ってよぅ!」

 走り出したカルの背中を、エミが急いで追いかける。
 エリカには、その姿が昔の自分と彼に重なっているように見えた。

 ゆっくりと、二人の後を追うように歩き出したその時、カルとエミが何かに気づいたように「あっ!」と同時に声を上げたかと思うと、突然立ち止まった。
 そしてまた同時に、くるりとエリカの方に振り向いた。



「「エリカ! ビアス昇格おめでとう!!」」



 二人の笑顔を見た途端、エリカの全身に力が満ち溢れていくようだった。

 照れくさいけど、嬉しくて、この一言が自然と出てきた。





「…ありがとう。」





 我らは騎士。

 国を守り、
  笑顔を届け、
   人々を救う。

 強き星たち。

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