しかし、星翔騎士団に入る女性はとても少ない。
 常に守られる立場である彼女が、なぜ剣を振るう事になったのか。
 それはもう何年も前に遡る。







―― エリカがまだ幼かった頃、彼女はヴァーストと呼ばれる小さな村に住んでいた。
 お世辞でも、裕福だ、と言える生活ではなかったが、それでもエリカは幸せだった。

 ある日、村から少し外れた場所にある花畑で、エリカは花冠を編んでいた。


「おいエリカ。」

「あっ…!」


 当時、エリカにはとても仲の良い友人がいた。
 その相手はエリカを友人と思っていただろうが、エリカにとって、彼は友人以上に特別な存在、初恋の相手だった。

 彼はエリカの隣にしゃがむと、足元の花をいじりながら問いかけた。

「それ、どうやるんだ?」

 彼の問いに、エリカは「ふふっ」と笑う。

「こうやって…、繋げるんだよ。」

 一つ花を摘んでは上手に結んでいく。
 その様子を眺めていた彼は、同じように手を動かすが、なかなか上手くいかない。

「あー! だめだ!」

 ごろん、と花畑に寝っ転がり、溜め息を吐いた。

「よくこんなの作れるよな…。俺もエリカぐらい手作が器用だったら…。」

「じゃ、じゃあ、出来たらあげる!」

 その言葉を聞いくと、彼は飛び起きた。

「ほ、本当か?!」

「うん!」

「じゃあ、約束だな!」

 互いの小指を絡め、「ゆーびきーりげんまん!」と歌い、エリカと彼は笑いあった。

「もう遅いから、そろそろ帰るか! よし、家まで競争だ!」

「あ、待ってよ!」

 まだ途中だった花冠をその場に置き、エリカは走り出した彼を追いかけた。

 大好きな家族、友人に囲まれて、ずっとこの生活が続くと思っていた。

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