ローランドが去ったあと、雛奈に「外まで案内しろ」と言われ、本部の外であり、今日は使われていない場所へ。
 エリカたちは、普段ならば、見習い騎士が修行を行うとされる庭に来ていた。

 そこに着くなり、雛奈は気を取りなおすように、また太刀を構える。

「んじゃ、よく見とけよ。」
「だから待て。その…説明が欲しいんだ。今からすることの。」

 エリカの言葉に、雛奈は一瞬きょとんすると、呆れたような溜め息を吐いた。

「…これだから都会の騎士は嫌なんだ。なんでもかんでも説明を求める。」
「悪かったな、都会の騎士で。」
「まぁいいさ。説明してあげるよ。
エリカ、あんたが持ってるシューラはなんだ?」
「私か…。」

 エリカはしばらく考えこんだ後、ようやく答えを出した。

「…水瓶だ。武器は大鎌。」
「自分のシューラ忘れる? 普通…。
あー…それで、そのシューラっていうのは、あんたが所有する武器と魔法を示す。…が、それと、もう一つ。
シューラってのはさ、ある意味そいつの守護霊みたいなものさ。」
「守護霊…?」
「えっと、つまり…あんたと一心同体の存在…みたいな?
つまりさ、その存在を操ること。それこそ、"本当に"シューラの力を得たことになるわけ。」

 雛奈の説明に、エリカは悩ましげに「ほぅ…」と呟いた。

「まぁ見てな。」

 雛奈はニヤリと笑うと、三度目の太刀を構えた。

 その瞬間、雛奈の周りに円を書くように、風が吹き、砂埃が舞う。

「…ついでに、うちのシューラは山羊。…覚えときな。」

 雛奈の太刀から、眩いばかりの緑色の光が溢れ、雛奈の顔を照らす。

「力を欲する者よ。我、汝の他に望みなし。汝、我に力を与えよ…。
カプリコルヌスッ!」

 次の瞬間、雛奈の体から溢れ出した光が、瞬く間に雛奈の頭上へ集まり、形になった。
 そこに現れたのは、先ほどの光で出来た、大きな角のある山羊だった。

「さぁ、行くよ!」

 ブンッ!と雛奈が太刀を振るうと、山羊は猛スピードで走りだした。
 目指すは、藁で出来た兵士。

 次の瞬間、山羊は藁に向かって体当たりをし、そのまま、ただの光となって消えた。
 藁の兵士は、跡形もなく消えて、代わりにそこに残ったのは黒い焦げの跡だけだった。


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