――…

「シャロン!」

 大急ぎで駆け寄る母親に、シャロンが思いっ切り抱きつく。

「騎士様が戻るまで外に出るなって言ったじゃない! アナタは何でそんなに勝手なの?!」
「ごめんなさい…。」

 しょんぼりとうなだれたシャロンは、消えそうな声でそう言った。

「しんぱいかけて、ごめんなさい…。」

 シャロンの言葉に、母親はぎゅっとシャロンを抱きしめかえす。

「本当に心配したんだから…。無事で良かった…。」



 しばらくして、シャロンはトコトコとエリカのところへやって来た。
 エリカはそんなシャロンを慰めるように、優しく頭を撫でる。

「シャロンが二度も迷惑をおかけしました。」

 母親が申し訳なさそうに頭を下げる。

「いえ、私はむしろシャロンと出会えて嬉しかったです。ありがとう御座います。」

 エリカが嬉しそうにそう言えば、シャロンは俯いていた顔を上げる。

「かえっちゃうの?」
「あぁ。私たちはまだ仕事があるんだ。」

 シャロンは少し寂しそうな顔をしたが、すぐに笑顔になった。

「シャロンは強いな。」

ぽんぽん、とシャロンの頭を撫でながらエリカが言う。

「えへへー!」

 嬉しそうに笑うとシャロンはエリカに抱きつき、ついでに母親の隣に戻り、手を振った。

 エリカたちはシャロンたちに手を振り返しながら、騎士団本部に向かって歩いていった。



「エリカもシャロンちゃんも、似た者同士だな。」
「お前らもだろ。」
「俺は大事なところで気絶しねぇよ。」

 カルにおぶられ、相変わらず目を回しているクロハに、二人は溜め息を吐いた。

 澄んだ空気の広がる、静かな朝。
 平和の象徴とも言える平穏な朝から、今日も1日が始まった――。

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