…――やっと落ち着きを取り戻したエリカは、カルに問いかける。

「クロハは? 置いてきたのか?」

 エリカの何気ない問いかけに、カルはばつが悪そうに頭を掻いている。

「あー…あれはなぁ…。」



―― それは数分前のこと…。

『と、とりあえず追いかけるぞ!』
『よっしゃ!』

 珍しく息が合った二人は、エリカを追いかけ走り出…

『?!』

 す、はずだった。

 辺りに広がっていた血で見事に滑ったクロハは、

『うごッ!』

 地面に頭を強打したと同時に、情けない声を上げた。

『何で不幸発動してんだよ!』

――――…



「と、いうわけで、気絶してるから置いてきた。」
「はァ…。仕方ない、担ぐか。頼んだぞ、カル。」
「俺かよ。」

 ブツブツ文句を言いながらもクロハのところへ戻るカル。
 その後ろ姿を見ていたエリカの袖を、誰かが引っ張った。

「おねぇさん…。」

 下に目を移せば、そこには今にも泣き出しそうにしているシャロンがいた。
 シャロンは潤んでいる大きな瞳で、じっとエリカを見つめ、しばらくして弱々しい言葉を漏らした。

「その…ごめんなさい…。」

 しゅん、と下を向くシャロン。
 エリカはシャロンと同じ目線になるようにしゃがむと、そ…っと頭を撫でた。

「…シャロン、私はお姉さんではないよ。」

 エリカの言葉に、頭に疑問符を浮かべたシャロンは可愛らしく首を傾ける。
 それを見て、エリカは優しく微笑む。

「エリカだ。次からはそう呼んでくれ。」

 パァッと一面に花が咲き誇るような笑顔になったシャロンが、首を縦に振った。



「うん! エリカおねぇちゃん!」

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