それから、しばらく二人で街の中を歩いた。

「シャロン様は、この街が好きですか?」

 不意に問いかけたエリカに、シャロンは首を傾げて答える。

「んー…すきぃ!」

 特に何も考えずに答えたであろうシャロン。
 それでも、エリカはその答えたが聞けただけで満足だった。

「そうですか…。良かったです…。」
「うん。あ、でもねぇ、さいきんこわいの。」
「怖い?」

 竜のことだ。エリカは瞬時にそう判断した。
 そして、シャロンの話を聞くと、更にその判断が確信へと変わる。

「夜になるとね、ぐおおおぉぉ!って声がするの。 それがこわくて、お母さんもシャロンもあまりねれないの。」

 その声を思い出したのか、シャロンは恐怖に怯えた表情で、体を震わせた。
 そんなシャロンを見て、竜を倒さなければならない、という責任感が重く肩にのしかかった。
 マリーリリーの人々は怯えている。かつて、エリカの村を滅ぼした竜に…。

 なぜなのか、エリカ自身もよく分からなかったが、気づいたらシャロンの頭を撫でていた。

「シャロン様、よく聞いて下さい。」
「?うん。」
「私は今日、シャロン様たちを困らせる怪物を倒しにきたんです。」

 それから、近くのベンチに座ったエリカは、自分が騎士である事、この街の近くに生息する竜のこと、今までのことを話した。
 理解してもらえなくてもいい。ただ、誰かに話したかったのだ。

 一通り話が終わったところで、エリカは話を逸らすかのように問いかけた。

「ところで、シャロン様はなぜ花を必要としているのですか?」
「えっと、シャロン、あげたい人がいるんだ!」
「あげたい人、とは?」
「だめ!ないしょなの!」

 シャロンはそう言い放ち、頬を膨らませた。頬袋にたくさんの木の実をつめたリスのようだ。

 その様子を見たからなのか、エリカはこんなことを問いかける。

「シャロン様、花冠って知っていますか?」
「はな、かんむり?」

 首を傾げるシャロンに、エリカは頷く。

「そうです。すみませんが、少し花をくださいませんか?」
「ん、いいよ!」

 シャロンから花を受け取ると、エリカは器用に花を編んでいく。何本か編むと、花は長く一本に繋がっていた。

「ほら。こうやって編んでいくんですよ。」
「わぁ!シャロンも!シャロンもやる!」

 興奮気味のシャロンにやり途中の花冠を渡すと、ウキウキしながら、先ほどのエリカと同じように編んでいく。

 しばらく編み続けるうちに、小さいながらも可愛らしい花冠が1つ出来上がった。

「できたよ!どお?!」

 シャロンは、子供にしては器用なもので、花冠は早く綺麗に出来上がっていた。

「お上手ですね。とても可愛らしいですよ。」

 エリカの言葉に、シャロンは照れたように笑う。

 その時、

「シャロン!」

 不意に、慌てたような女性の声がした。

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