馬車から降りて、すぐそこに広がったのは、至る所に花壇が設置され、美しい花々が咲き誇っている町、マリーリリーだ。
 花が多いためか、そこに立っているだけで心が癒やされていくようだ。

 エリカ自身、ここへ訪れたのはこれが初めてであったため、その場で写真に収めた。

 そんな穏やかな雰囲気の中、この二人だけは相変わらず嫌悪感を抱いたままだった。

「はぁ…。あん中めっちゃかったるかった…。」と、肩を回しながらクロハが言えば、

「お前が朝から変な空気出すから…。」
と、呆れ半分に言うカル。

 この流れに入ると、二人の口論は止まらない。

「それはアンタが無理やり叩き起こしたからやろ! 俺は人に起こされるのが大ッッッ嫌いだって言うたやろが!」
「じゃあ寝坊すんなし!遅刻すんなし!」
「遅刻はお前もやん!」
「昨日はちゃんと起きたぜ?!」
「エミに起こしに来てもらったんやろ!」

「あーもう…いきなり喧嘩するな…。」

 「喧嘩両成敗」と、言いながら、エリカが二人の間に入れば、二人は不満そうな顔で離れる。
 この二人の間は、常にエリカがいなければ口論が始まってしまう。

 エリカたちがこれから向かうのは、マリーリリーから少し東側。そこに竜が現れるという。
 討伐開始は次の日の朝。それまでは宿で一夜を過ごすのだが…。

 これからの事に、心配に心配が積み重なり、どんどん肩が重くなっていく。

 そんな中でも、エリカは、スウ、と目を細め、静かに覚悟を決めた。



―― この任務、絶対に成功させてみせる。



 ミッションスタート。



end


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