早足でリムーザの部屋へ向かうエリカ。
しかし、そんなエリカの足を止めたのは、ザワつく騎士たちと、ドンドン扉を叩くカルの姿だった。
たまたま見つけたのだ。否、"してしまった"の方が正しいだろう。
なぜなら、こんな面倒臭そうな事に巻き込まれるのは御免だからだ。ほんとに。
「おーい、でてこーい! でてこーい!」
そう叫びながら、カルは自室のドアを何度も叩いていた。
カルに気づかれないように、そそくさとその場を去ろうとしたエリカを、カルの目が捉えた。
「おぅ!エリカ!」
笑顔で手を振るカルに、エリカはビクリと体を震わせ、顔を引きつらせた。
「無視すんなってー! おーい!」
カルが大声で呼ぶため、周りの視線も徐々に自分にも集められていく。
このまま無視するわけにもいかない。
仕方なく、エリカはカルのもとへ向かった。
「なんの騒ぎだ?」
大体の事は予想がついていたが、とりあえず聞いてみる。
すると、カルは困ったように笑いながら答える。
「実はさ、アイツがまた閉じこもっちゃって。」
アイツ、というのは、当然の事ながらカルのパートナーの事だ。
今朝に集会があったのだが、それに、カルは彼を置いて一人だけで行ってしまったのだ。
エリカが溜め息混じりに言う。
「はぁ…。お前が置いてくからだろう…。まぁ、ほっとけば出てくるだろう…。」
「それがさ、今回の任務にはどうしてもクロハが必要なんだよ。竜討伐、だっけ?」
「…お前もよく断らなかったな。パートナーは任務に出たら、自分も出る事になるんだぞ? 必ず参加しろ、という内容ではなかったしな。」
「あー、まぁ暇だったからいいかなーって。」
と、呑気に笑うカル。
―― 引きこもりのパートナーの事はガン無視か。ていうかお前はいつも暇だろ。
実を言うと、カルとそのパートナー(引きこもり)は、この騎士団でも有名なサボリ魔なのだ。
普段騎士たちはいつ任務が来てもいいようにと、常に騎士服に身を包んでいる。
しかし、彼らはいつだって普段着。むしろ騎士服を着ている時の方が珍しかったりする。
カル曰わく、「俺が目指しているのは騎士じゃない!探偵だ!」との事。なぜここにいるんだ。
本当に謎の多い男だ…。
「…それなら邪魔はしない。精々頑張ってくれ。」
「あ、待った待った!」
付き合ってられない、とばかりに、その場を去ろうとするエリカを、カルが慌てて呼び止める。
嫌々振り返るエリカの顔色には、明らかに呆れの色が混ざっていた。
一方のカルは、頭をかきながら苦笑いを浮かべる。
そんなカルの言葉に、エリカの時は一瞬だけ止まったように感じた。
「えっと…エリカ、お前は俺らとチームだぜ?」
「………………は?」
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