結局、あまりスッキリしない気持ちで下山することにした。
 しかし下山したエリカたちの前には、今か今かと帰りを待ち望んでいた村人たちがいた。

「騎士様! お怪我は御座いませんか?!」

 一番初めに駆け寄って来たのは、この村の村長であるバーナードだった。
 心配そうに問いかけるバーナードに、ルルーは笑顔で答える。

「全然平気です。楽勝でしたよ。な、エリカ?」

 急に話をふられ、ぼーっと立っていたエリカはハッとして答えた。

「え? あぁ…、はい。意外とすぐに終わりました…。」
「そうですか! それは良かった…。本当に良かった…。」

 無意識で呟いているようなバーナードの声は、心の底から安堵したようだった。

 それに対し、ルルーは申し訳なさそうに微笑んだ。

「ただ、不甲斐ない事に原因を突き止める事は出来ませんでした…。ですので、またこのような事があったら、すぐに私共をお呼び下さい。」
「はい。今回は本当にありがとう御座いました。」

 ルルーの手を握るバーナードの表情は、とても穏やかなものだった。

「では、私共はそろそろ…。」

 そう言うと、ルルーとエリカは早々と村から出る。



「お気をつけて!」



 後ろを振り向けば、笑顔で手を振る村人たち。
 良い村だった、と思いながら一礼をすると、二人はまた雪道を歩き出した。



 不安でいっぱいだったビアスとしての初任務だが……。

―― これは、成功で良いんじゃないか?

 そう思うと、自然と足取りが軽くなった気がした。

TOP