「良いのですか? ルルー様。」
「ん? 何がだ?」

 バーナードの家を出たエリカたちは、鳴き声がよく聞こえると言われる雪山を登っていた。

 無言で登っていると、ふいにエリカがそう問いだので、ルルーは首を傾げた。

「任務の内容が変更された件です。」

 冷静に話すエリカに、ルルーは軽く答えた。

「別にー? だって困っている人を助けるのが騎士団なんだしさ。てかぶっちゃけ、原因を調べる"だけ"の任務ってどうなの?って思ってたし、丁度良いだろ。」
「確かに、私もそう思っていましたが……。」

 曖昧に返すエリカの脳裏には、とある疑問が浮かんでいた。

―― なぜ、騎士団は調べる"だけ"の任務にしたんだ?

 どうせなら退治してしまった方がいいはずだ。実際、バーナードも直接退治を依頼してきた。

「ま、細かい事は気にすんなって。早いとこ終わらせて帰ろうぜ。」

 ルルーは、ダルそうに欠伸をすると、歩くスピードを速めた。

 その時――



グォォオオオ!!



 最初に村に来た時と同じ鳴き声。しかもかなり近いようだ。これは――

「ルルー様。」
「あぁ! 出やがったようだな!」

 バシッと自分の左手の掌を殴り、ルルーは戦斧を構えた。
 エリカも、担いでいた鎌を構え、戦闘体制に入る。

 この戦いを盛り上げているかのように、吹雪も次第に激しさを増した。

「前が見えませんね…。」
「あぁ…。けど、このぐらいなら……」

 ルルーの言葉を遮るように、黒い影が突進してきた。

 だが、次の瞬間、

 ドサリと、黒い影は雪の中に倒れた。

 それを確認してからか、はたまた最初から分かっていたのか、ルルーはニヤリと笑って言った。



「楽勝だな。」



 それを合図にか、黒い影が、エリカたちに向かって次々と飛び込んできた。

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