▼あと…もう、少しだ…。あとちょっとで…制限時間に到達…する、筈だ…。
「はあ、はあ…、はあっ…」
体全身が、ビリビリと痺れたように震え、そろそろ本当に体が言うことを聞かなくなってきた。
指を動かすだけで、感電したような痺れが何度も走り、息をする度、ふわりとまた力が抜けていく。
そんな倦怠感も痛覚も走る神経、それさえも無視して奥に押しやって、
あーあ、くそ…。あんだけジュラに啖呵切ったのに、引き分けに持ち込むので精一杯だなんて…恥ずかしい話だ。
けど…負けられないんだ、せめてこの試合だけでも…次に、繋げてやるんだ…
ウェンディが、ルーシィが、グレイが、ジュビアが頑張ったこの一日を…無駄にしないために、明日頑張る子供たちのために
俺は…、俺は……!!!!
▼ドォン、ドォン、と何度も会場に響き渡る衝撃音。
まるで、次々と爆発しているような凄まじい音と揺れは、会場の中心、ジュラと塑琉奈の肉弾戦から発せられていた
互いが拳を奮い、避けたと思えばまた一発。
速く繰り出される蹴りと張り手、そして一発一発と、ジュラが、塑琉奈が、攻撃を受けてはその繰り返す。その壮絶な音が周りに飛び交う。
▼互いに焦燥感煽り、満身創痍な激闘。
そんな中で、ジュラはもう把握してしまっただろうか、塑琉奈の攻撃を耐えながらに、魔法の印を結んだ。
「ぬうんっ!」
「ちぃ…!」
自分の場所から塑琉奈を遠ざけるように石柱を出現させて、彼女を遠くへ押しやるように、ぐるんっと石柱を追尾させていく
塑琉奈はギリッと唇を噛みながら、仕方なくその場から一度離れると、途端に無数の石柱に追い掛けまわされていく。
もし、お主の魔力がないのなら…これ以上は…。せめて…もう体に負担を掛けさせるわけには…!
そしてそんな塑琉奈を目に離さないまま、ジュラの中で慈悲の呟きが落ちていった。
▼「うらぁああ!!!!!」
逃げるように円を描きながら会場を走り回る塑琉奈。
雄叫びを上げ、何度か石柱を拳や足で粉砕するも、同時に限界へ着実と向かう体には大きな負担に影響していく。
「(速く…!速く速く速く速く!!!)」
速くジュラの懐に…!!!少しでもダメージを…!!!
魔力がないままに肉弾戦を強いるしかない塑琉奈にとって、まだ魔力のあるジュラの出す土魔法の牽制は、スタミナを著しく消費し、引き分けに持ち込むのさえ危うくなる。
もう塑琉奈には時間がないのだ。
制限時間も、肉体的にも、それを繋ぎ止める精神も意識も。
だが、それは塑琉奈自身だけが知っている事実ではなかった。
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