▼会場の一角、フェアリーテイルのメンバーたちは塑琉奈の戦いぶりに、手汗握る興奮を胸に、彼女に声援を絶やさない


「いけー!そこじゃー!塑琉奈ー!光神姫を出せぃ!」


ジュラをボコボコにしたれー!っと自ら拳をシュッシュッ、と突き出し、マカロフは声を張り上げる。

そしてそれは彼だけではなく、他のメンバーたちも「勝てるのでは…」という期待と不安の半分を胸に秘める


「塑琉奈ー!ミント使って!体を少しでも回復しないと!」

「母ちゃん!!!」


けれども、マカロフの声も、リサーナの助言も聞こえていないのか一向に耳をもたず、塑琉奈は傷付いた体そのままにジュラと対峙を繰り返す。

それを静かに見つめていたメイビスは、ぴくんっと肩を動かし顔をしかめさせた。


▼「…なんで母ちゃん魔法使わねぇんだ?」

「…何か考えがあるんだろ」

「でも…ジュラとあれだけ戦ってもうボロボロだよ…?」


覗くように見ていたドロイが肉を片手に素直な疑問を落とす。そして、それを聞いたジェットの答えにレビィは心配そうに塑琉奈を見据えた。

同時に、メイビスはそんな彼らの疑問に答えるために、すうーっと一度深呼吸した。


「…おそらく、彼女の…、塑琉奈さんの魔力はもう無いのでしょう…」


メイビスから発せられた答え。
その言葉を聞いた瞬間、マカロフの声援が止む。

そして、ギルドメンバーは一目散に目を見開いて、口を開いたまま、固まった。


▼「はあ!?!?魔力がねぇ!?!」

「どういうことだよエルザ?!?」


おそらく、ナツとエルフマンも、先ほどのミラ、レビィたちと同じように流石に塑琉奈の戦い方に疑問を抱いていたのだろう。

そして、エルザがくっ、と悔しそうに歯を噛み締めながら「信じたくはないが…」っと続けた彼女の答えに、二人は声を荒げてエルザと、塑琉奈を何度も見やる


どうやら塑琉奈に対する疑問は次々と、彼女の様子から、周りに広がっていっていたのだ


「けど、んな暇あったかよ?!」

「そんな感じはなかったぜ…」

「……私だって信じたくはない」…!」


けれども、今目の前で戦っている塑琉奈から魔力が感じるどころか、覇王岩砕を受けた後は魔法さえ見ていない。

そんな現実を突きつけられて、エルザはギリギリと噛み締めた歯に力を加える。


▼本来なら、ウェンディやルーシィのように倒れても仕方ない。

なんせ…一気に魔力を奪われたということは、それだけ体に負担が大きいからだ。

魔導士にとって、魔力は生命の源。その魔力が強大なもの程、それを奪われればより苦痛を味わう。


もし塑琉奈が本当に魔力を奪われていたなら…今の彼女は、相当な体の負担を抱えてるに違いない。
倒れてもおかしくない位に。

「…母さん、もう…」


それでもあのジュラを相手に互角に戦い続ける母の姿。それを見つめ、三人は唾を飲み込んだ。






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