▼「では、行かせてもらうぞ!」
そして、ジュラの声を合図に彼はババッと指で印を結ぶ。途端に、ジュラと塑琉奈の間、いやジュラから塑琉奈目掛けて、またあの巨大な石柱が地面から襲いかかる。
「…っは!」
塑琉奈はそれを前、パァンッと自分の太ももを力強い叩いてから足を動かした。
その足で目の前に襲いやってくる石柱をピョン、と身軽に避けては、素早く右サイドを走り抜けていき
自分を追い掛けてくる石柱を無視に、塑琉奈は彼の後ろへ回り込み、彼女が拳を奮う瞬間
「そう簡単には…」
近付けさせん!っと、塑琉奈に視線外さずに見切っていたジュラは、彼女の拳を肘で左腕で受け流し、ドゴォンッと塑琉奈を石柱諸とも打ち上げた。
▼「んぎ…!」
石柱の勢いと共に高く上がる塑琉奈の体。そして自分の体に当てられた衝撃に彼女はギリッと歯を食い縛る。
くそ…!まだ、力が…!
脳裏に掠めたのは、自分を襲う、未だ拭えぬ気だるさ。
先ほどの覇王岩砕を受けた負担と、魔力が無くなってこんなにも力が消えていくことを、この時になって塑琉奈は理解する。
▼「…いや!まだ、だ!」
んぎぃっ、と小さな唸り声が漏れた後、グウンっとどんどんと自分ごと上がっていく石柱に向かって、力一杯に拳を叩いた。
途端、ビキッというヒビが生じたと一緒に、石柱は粉々に砕け散る
▼「…まだ、闘える…!」
体が動くならそれだけでいい!力が少しだけでもあるならそれだけでいい!生きているなら、何度だって死ぬ気で闘ってやる!!!
この体が動かなくまでは、果てるまでは、俺の思いは!続く!続けられる!!
▼それでも、彼女の中に、痛覚と、痛みの感情があっても、『諦める』その言葉だけは、塑琉奈の中でどこにもなかった。
▼砕け散り、自分と共に地上に向かって落ちていく瓦礫を一個一個、それを足場にして素早く移動を繰り返す。
それを分かっていただろう、また自分へ向かって伸びるジュラの石柱。その一つに飛び乗って塑琉奈は逆走していく。
「おらぁ、あ!!」
そして、地上に着いた途端、今度はドォンっと地面に拳を叩き付ける。
その震動はまるで大きな地震が起きたかのような、激しい揺れで。
「…むぅ…!?」
それは会場全体に轟いていき、みるみる内にジュラの生やした石柱、先ほどまであった残骸さえもビシビシ、ギシギシ、と崩れていった。
《うぉおお!!!すごい!!ジュラの攻撃を、まさかこんな方法で…!》
《まるで地震スなぁ!》
《塑琉奈ちゃん本当に女の子!!?》
塑琉奈の立ち上がり、そして攻撃、それに魅了されてチャパティが興奮気味に吼える。そして、あまりの怪力を目にしてジェニーの顔は引き吊るばかり。
そして、そんな激しい攻防戦を二人の間で見てる中、ヤジマは顎に手を当てて首を傾げた。
「(…なんか、おかしいよねェ…)」
先ほどの彼女の戦い方も勿論、自分自身の力を上手く使った…今のスタイルは変わらない…と思うんだけど。
それでも、何かが、何かが抜け落ちているようなそんな感じを…薄々とヤジマは感じていた。
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