▼『無理しないで、もう棄権しちゃいなよォ…?』


サアッと風が俺の頬を撫でる。冷たく透き通った空気。視界は未だに最悪。辛うじて見えるのは空の色だけ。

そんな中、またイワンの言葉が響く。


「…そうか…」


ウェンディは、シャルルは、これを食らったのか…。

怖かっただろうに…、突然真っ暗になって、何も聞こえなくなって…力も全部取られて、この痛みと、恐怖で縛られて。

…あの小さな体に、あんな優しい思いやりを持った子に、こんな思いをさせたのか…。


▼『どうせもうお前なんかじゃあ勝てないんだからさぁ?アッハハハ!』


あれだけ、真剣に戦っていたルーシィにも、こんなひでぇ仕打ちしやがって。

あんなに頑張っていたのに、

自分の体が痛むほど修行をしたあの子に…仲間のために勝とうとしたルーシィに…。


▼『お前の戦いなんて、だぁあれも期待なんかしてねぇんだよぉ』


グレイも、ジュビアも…こんな邪魔をされていたんだね…。

…ああ…悔しいよな、悔しいよなぁ…!!自分たちの力も充分出せずに、こいつのせいで……あそこまで笑われて、馬鹿にされて。


そんな筋合い、ねぇのによ……


▼熱い、溶岩のように熱い激情が俺の胸にどんどんと溢れていく、零れていく。

その焦燥感がじわり、じわり、と痛みを焼いていき、ゆっくりと確実に、熱が身体中に帯びていく。


『今なら諦めたって何も言われないってぇ、なぁ?自分の身の方が大切なんだろう?家族なんて、仲間なんて放って裏切っちまえよォオオ!!!!』



そして、最後に響いたイワンの言葉に、プツンっと頭の何処かで何かが切れたような音がした


「うるせぇ!!!!黙れ!!!!!」


俺は!!!!その家族の、仲間のために、戦ってんだよ!!!!!

七年間待ってくれた皆のために、必死に修行を詰んで戻ってきた仲間のために!!!俺は此処にいるんだよ!!!戦ってんだよ!!!!


てめぇに言われる筋合いなんてねぇ!!!!!!


同時に、俺は無意識に自分の拳を握り締め、その拳に渾身の力を込めて、自分の顔に奮った。





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