▼全身を駆け巡る、絞られたような、四股が千切れてしまうような痛み。皮膚にはジンジンと、焼かれたように滲みる痛み。

けれど、それを感じた時、不意に安堵が漏れた。


痛みがあるなら、神経は切れてない…。良かった…。

また歩けなくなってたら、ラクサスに怒られちゃうもんな…。

足と腕は…大丈夫だ。ちゃんと動く、血が通ってる。体温も、気温もちゃんと感じてる


「(起きなきゃ…)」


何度か、小刻みに指と間接たちを動かして、全身に駆け巡る痛みを隠すように大丈夫、大丈夫だ、っと自分で言い聞かせる。

そして、ぐっ、と腕に力を入れて起き上がろうとすれば

巡っていた痛みが一気に強くなり、ビシビシ、ギシギシというような…器官が、骨が、肺が、心臓が、全てが軋む音が、体の中で轟いた


▼「…っあ…ぁあ゙、あ゙…!」


痛てぇ、なん、だよこれ。死ぬほど、痛てぇ…!腕が、足が…千切れそうだ…死ぬんじゃ、ねぇの……俺……


轟き続ける激痛は、俺の力を容赦なく奪い去り、代わりに痛みがまたやってくる。

同時に自分の口から漏れた、掠れた声に…喉が…死んでやがる、っと眉間にシワが寄る。


腕に…力が入らねぇ。おかしいな…動く筈なのに。痛すぎて動きにくくなってんのかよ…?


▼起き上がるだけでさえ、まるで背中に何かが乗ってるかのように体が重い。それと一緒に、全く自分の体に力が入らないことに苛立ちが募る

力が風のように、柔くふわりと消えていく。何度力を込めても、スウッと体から抜け出ていって…


「(…くそ、くそっ、くそっ、くそっ…!!!)」


脳を動かせば、頭痛と、頭の先から足先まで軋むような激しい痛み。

身体は脱力感に襲われ、力を込めても直ぐに消えていく。それに思わず、内から悔しさが溢れ出た


動け!動け!動け!動け!動け!!!!


▼《おっとぉ!?塑琉奈ちゃん、辛うじて体を起こす!!けれど体はもうボロボロだ!!!》


「ぐぅう…!立てぇ、立てぇ塑琉奈…!」

「無理もねぇ…、ジュラの大技が直撃したんだ。」


倒れ込んでいる塑琉奈を目にして、歯を食い縛るマカロフ。その近くでマカオが、むしろここまで戦えただけでも、とぐっと、悔しいのを押し込んだ、くぐもった声を出す。


「…何言ってんだよ!?母ちゃんなら直ぐに立つって…!」


そのマカオの言葉に食って掛かるようにロメオが、マカオに向かって吼える。

同時に、後ろにいたギルドのメンバーたちの心配した顔持ちを見て、ロメオはくっ、と口を結んだ。

大丈夫だ、きっと大丈夫だ…!!!
母ちゃんなら、きっと立ち上がってくれる。何より…


「(俺は、母ちゃんに勝ってほしいんだ)」


ロメオの内に溢れた、純粋な、塑琉奈に対しての、希望と願望。それだけが彼の中で渦巻いていた。






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