▼「(さて…)」
フヨフヨと塑琉奈の周りを浮いているノート。そこに表示された数字を横目に見やる
そこには【残り魔力:396%】っと表示されていて、それを見て「(まだまだいけるな)」っと内に溢す。
「絵描入門…」
これが今日最後の試合。…なら惜し気も無く出した方がマシだな。
あんまり手の内晒したくないし、顰蹙また言われるかもだが…勝つには手段選んでられない。やるしかねぇか。
トライデント割っちまうジュラ相手には、コイツがやっぱり得策だ
「ラミア」
そして、塑琉奈の言葉にノートがしきりにバラバラとページを捲り出す。
同時にボンッと彼女の隣に現れたのは、頭に二頭の蛇と、下半身が蛇の女性だった。
▼「(…ふうん)」
塑琉奈とジュラの戦い。それはあまりにも予想外な互角の、互いが一歩も譲らない激しいもの。
会場の観客たちが、無駄な言葉も漏らさずに、ただひたすら目の前にある真剣な戦いに唾を飲み込み見てる中。
イワンは望遠鏡を片手に、口を三日月のように裂けながら、楽しそうに何かを眺めていた。
「(へぇ、まだ魔力有り余ってるんだねぇ…)」
そう、それは会場の中心にいる。今戦いを繰り広げている塑琉奈の姿で。
「精々…頑張ってくれよォ…、塑琉奈ちゃあん…」
にんまり、楽しそうに笑い、そう言った彼の言葉。その真意。
彼が何をしようとしているのかを、今のマカロフ、ギルドのメンバー、司会席、観客たち。
そして…、塑琉奈の戦いを静かに見守っているラクサスさえも、まだこの時は、知らなかった。
▼「ハァーイ!」
《おおっとぉ!?突如塑琉奈ちゃんの隣に、おお、女の子が!?》
《聖霊?とはちょっと違うスね》
《ふーん、かわいいじゃないの》
突然の女の子の登場に会場からは困惑と、それとは裏腹の歓喜の声が上がる。
そしてそんな中で、呼び出された蛇の女は辺りを見渡し「きゃー!すごいー!こんなとこで呼ばれちゃった!」っとおおはしゃぎ。
▼「次は蛇か…!」
ジュラはそれを目の当たりにして、さてどう出てくるかっと、その女の子と塑琉奈を交互に見て指を構える。
見た目を見る限りでは動きは鈍そうじゃが…、先程の魚のように縦横無尽に泳ぐか?それとも他に能力が、
「あら、やだ。私おじさまに睨まれちゃってる!」
そのジュラの視線に気付いたのか、前に向き直り彼を端から端まで凝視する彼女。そして途端に、少しだけ頬を赤らめて、頬に手を添えた
「…貴方、ちょーっとだけ好みかもー」
「これはっ!?」
そうラミアが指をくるんと動かした瞬間だった、目の前に蛇が突然現れてシャアッと襲ってきたのだ。
一瞬、何が起きたか判らずにその蛇に視線が合う。すると今度はふわっと蛇が消えて自分の髭が。
「しまっ…!」
「ふっ!」
そして、それが分かったと同時に今度は蛇ではなく、塑琉奈が一気に間合いを詰めていて。それを理解した瞬間、顎にドォンッという衝撃と、強烈な痛みが走った。
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