▼あれじゃあ、流石に儂でも攻撃しにくいのう…。よく考えてらっしゃるが…儂とてあの刃を何度も落とされてはたまらんわい!
「はっ!とう!!!
光の刃によってボロボロになった岩鉄壁をジュラはバラバラに分解させていく。
すると今度はそれを宙に浮かせ、上空を縦横無尽に動く塑琉奈目掛けて投げ放つ。
「…あっ!やべっ!」
それを上から見た塑琉奈はうげっ、と嫌そうな声を漏らす。そして此方に無慈悲にも勢いを付けてやってくる瓦礫の数々に、また塑琉奈は光神姫から無数の刃を放った。
けれども、ジュラの意思、ジュラの意図的に動く瓦礫は、まるで先程とトライデントのように…いや、トライデントよりも正確にターゲットを絞る隕石。
その瓦礫たちはビュンビュンと的確に光の刃の並みを避けて、次には塑琉奈を乗せているトライデントへ直撃させた。
「く…、そ…!」
瞬間、バリンっとトライデントは次々と瓦礫たちの餌食となり、割れて崩れ落ちていく。
それに苦い顔をしながら、塑琉奈はダンッと割れる前のトライデントを踏み台にして、高らかに空中へジャンプ。
それを見た瞬間、「この時を待っておった!」っとジュラが言ったと同時に残りの瓦礫、それを空中にいる塑琉奈へ狙いを定めて向かわせる
「うっ、あっ!…いっ、つぅー!」
塑琉奈は空中。足場も、地面も、近くに建物もない。ましてや空中では動きは制限されてしまう。
ジュラの動かす瓦礫はそれを見逃さずに、ガッ、ガガガッと次々とその瓦礫たちが塑琉奈の体に激突していった。
そしてそれは、無傷だった塑琉奈がどんどんと傷付いていく瞬間だった
▼さてどうする塑琉奈殿…?懲りずに槍を出すのか…、またその鉄扇で先程の技を出すか?次は防いでみせるぞ…!
次に何が来るのか、ジュラの中で期待と緊張の入り交じった声が内に溢れる。
瓦礫によって、ゆっくりと落ちていく塑琉奈を見つめ構えながらに、ジュラはゾクゾクと自分の身に震えが走るのに、頬が緩む。
「(これ程楽しい戦いは初めてじゃわい…!)」
武者震いがこんなに止まらんとはのう…!!!
▼くそ…痛ぇ…、一応女なんだから加減しやがれってんだ。いたいけな女の子って言ったのに…。あ、もしかして俺、女に見られてない……?うっわーーーーーーー!!!それはすんげぇショックだわ……!!
「(じゃなくて…!)」
どうする!?またトライデント出すか!?いやジュラのやつ、トライデントの精度を理解してやがる!多分直ぐに壊されるのが関の山だ…!
「(黎明破を使って地面への衝撃を和らげるか…?駄目だリスクが高いし隙で大きい…!)」
このままじゃ、ジュラのかっこうの獲物だ…!
▼ババババ、と塑琉奈は一気に思考を張り巡らし、脳をフル回転。
そして脳裏に色んな可能性、イメージを想定してから、「あれじゃない」「これじゃない」と、塑琉奈の中で最小限の対策を導き出す前に、ヒュウッとどんどんと自分と地面への距離が近付いていく。
同時にピリッとまるで脳に電撃が走るように、浮き出た対策に「これだ!」っと塑琉奈は脳内で叫んだ。
「ー…っう!ミントォオオ!!!!」
塑琉奈が当てられた瓦礫と共に落ちていくその瞬間だった。彼女は落ちていく体をそのままに、ある名前を叫ぶ。
すると、またノートが光ったと同時に、大きな緑色の魚が何処からともなく空間を裂いて姿を現した。
「緑のお魚さんだー!」っとアスカが嬉しそうに声を上げると共に、観客からも戸惑いと興奮の混じった「おお…!」っという声が漏れる。
チャプンッとまるで水から跳ねたように現れたそれは、ジュラを目の前にパクンッと塑琉奈を呑み込むと、また空間の中へ潜っていった。
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