▼《本日の最終試合、開始ーーー!!!!》
「ふんっ」
司会の声が会場に谺すると同時に、試合開始の銅鑼が鳴り響く。
そして、それを合図に直ぐ様ジュラは塑琉奈を見据えたままに、手をかざす。
すると塑琉奈のいる地面から、無数の石柱が交差しながら生えていく。
塑琉奈はそれを察知し直ぐ様後ろの方へと、ピョンピョンっと身軽に体を浮かせ、下がった。
「っと…!」
そして、彼女が地面に着地するよりも先、今度はそんな塑琉奈を囲むように石柱がまた現れて、ぐるりとしなりながら彼女に狙いを定めた。
ゴォオッと勢い良く此方へ向かう石柱の一つを手に付き、また一回転。
そうしてタンタン、と自分の元にやってくる石柱を足場に避けながら、塑琉奈は静かに「絵描入門」っと唱えた
「トライデント」
パァッとノートが自分の頭上の左側で輝きながら光ったと同時、ドドド、とまるでそれが合図のように、今度は光の大きさの疎らな矢が無数に地面から突き出てやってくる。
《おおー!?塑琉奈選手、魔法を駆使してます!やはりヤジマさんの言った通り、彼女はれっきとした魔導士だったみたいですね。》
《そうだねぇ。それより…彼女の魔法が気になるとこだね》
《面白ーい!》
その無数の光の矢の輝きに「ぬう?」っとジュラから小さな唸りが漏れた。
同時、その光の矢…トライデントは何度か屈折しながら、塑琉奈を襲う石柱に向かい、その石柱たちを相殺させると、今度は一つに纏まりジュラへグルンッと一直線。
その間に、塑琉奈は地面へやっと着地する。
「…ほう」
トライデントにより、ドォオオンと大きな衝撃音、それに飲まれてジュラは一度、砂ぼこりの中に覆わていった
▼「ジュラさん!」
「心配はいらんさ、シェリア」
それを見守っていたシェリアからの、心配した声が漏れる。それとは逆に、リオンが表情を変えずに彼女を制止させた。
そして、ジュビアのチームには悪いがっとポツリ内に言葉を溢す。
塑琉奈さんがどんな魔導士だろうと…、ジュラさんこそフィオーレ一の魔導士だと思っている…!
そうリオンが溢し、フッと笑った瞬間だった。
砂ぼこりが晴れた先、ジュラが巨大な土の拳と共に姿を現したのは。
▼ブァッと砂ぼこりと共に、風を切り、その巨大な土の拳が塑琉奈に襲い掛かる。
その勢いに撒かれた風に髪を揺らしながら、塑琉奈は目の前にグオッとやってくる拳を臆せずに見つめながら、トライデントを消して次の絵描入門へ。
「絵描入門、水天魔鏡…!」
キィン、と金属音と共に、塑琉奈の目の前に現れた大きな鏡。その鏡にトプンッと巨大な拳は一度呑まれていく。
なんだ、とジュラがそれを見張っていれば、その鏡からドプッと先程自分で出した筈の拳が、此方に向かってやってくる。
それに、彼はフッと未だに余裕な笑みを浮かべて次の魔方陣を描いた。
「ふん…!」
「いっ!?ちょっと待っ…!?」
跳ね返されて、自分の方へやってくる拳、だが元は自分の魔法。ジュラはそれをいとも簡単に、更に跳ね返し、また塑琉奈へ向かわせる。
それを予測してなかったのか、塑琉奈がそれを目の当たりにした瞬間に苦笑いが溢れた。
▼おいおい、マジかよ…!
それは洒落になんねーよ!?
「いっ…てぇー!!!」
そしてドガァッと土の拳が自分の体にクリーンヒットして、雄叫びを上げながら、塑琉奈の体はその拳と共に、少し遠くまで吹き飛んで行った。
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