▼「最悪だ…史上最大級の最悪の事態だ……なんてこった。俺が何をしたっていうんだ…」

「おいしっかりしやがれ!」

「あらあら…魂抜け出てるわ…」


当の呼ばれた本人、塑琉奈は未だにその場に動けずに、ズゥンっと言わんばかりに肩を落とす。

そしてそのまま崩れ落ちる彼女に「だめだこりゃ」っとガジルから呆れた声が漏れた。


「こいつァはツイてねぇな」

「あは…ははは……イヒヒ……はひ……」


放送を聞いてからニヤニヤとラクサスは至極楽しそうに笑い、塑琉奈を見下ろす。

そして、「ざまぁみろ」っとこれでもか、とハッと鼻で笑うラクサス。そんな彼の態度も目に入らない程に塑琉奈は未だに意気消沈。


「あのジュラとぶつかっちゃうなんて…」

「そんなに強ぇのか、あのボウズ」

「私とエルザ二人がかりでも勝てるかどうか…」


▼それを心配そうに見つめながら、ミラは苦笑いを溢す。そしてミラの言葉に首を傾げたガジルは、直ぐにニィッと歯を見せて笑った。


「…けどよ、ツイてねぇのは向こうも同じだろ?」

「…ちげぇねぇな。おらいつまで落ち込んでやがる。さっさと行きやがれ」

「いぃいいいいやぁああああだぁあああああ!!!!!触るなケダモノぉお!猛獣!ゴォオリラァアアア!!!!!!」


ガジルの言葉に、ラクサスが釣られるように笑い、頷く。隅っこで笑いながら沈んでいる塑琉奈をズルズルと引っ張り出す。

同時にジタバタと駄々をこねる塑琉奈を「ガキかてめぇは」っと一掃し、そのままポイッと外へ投げ込んだ


「うわぁああん!!!!鬼ぃいい!!!悪魔!!!!ゴリラ!!!ゴリラぁああ!!!!」


そして会場には泣きわめく塑琉奈の声が響き渡った。


▼「あっはは!なんだありゃー!もう泣いてやがるー!」

「頑張れ従業員さーん、ププッ!」


会場の下、舞台へ放り投げられれば、飛び交うのは観客からの馬鹿にしたような声。それを体に浴びながらも、ぐぇえ…!っと鼻を啜る。


くそー…チクショウ…まさか序盤で俺がこんな目に遭うなんて…。ちゃんとラクサスって唱えたのに…神なんていなかった…!!!


「くそぉー!こんないたいけな女の子を戦わせるなんて…妖精の尻尾のギルドマスターは鬼でーす!皆さん気を付けましょうー!」

《おーっと、先程まで元気のなかった塑琉奈選手!ギルドマスターに文句を言ってます!》

《元気だねぇ、あれなら大丈夫でしょ》


それを聞いた会場の一角、マカロフはぐもぉお!っと声を上げ、隣にいたメイビスや周りの皆はアハハ!と笑いが溢れる。

それと同時に会場からも「なんだそりゃー!」「マスターに文句いってやがる」なんて、まさかの笑い声が谺する。


「どこが“いたいけな女の子”だ。メスゴリラが」

「お母さん頑張ってねー!」

「負けたら踊らせるぞゴラー」


それがラクサスたちの方にも聞こえたらしく、やっと塑琉奈らしい元気さが出てるのに三人とも心配を落とさず、彼女に対して柔らかい笑みを浮かべた。







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