▼予選突破チーム最後の一角。そう、誰もが知っているだろう第一位は“剣咬の虎”
司会の声と共に彼らが顔を出した瞬間、会場が一気に熱い歓声へ包まれる。
あれが“剣咬の虎”
ナツたちを始めに、他のメンバーたちをそれに目を凝らす。
そして塑琉奈は、ある一人と目が合った瞬間にギョッと目を丸くした。
「あーーーーーー?!?」
「あ、アンタ…昨日の…!」
そう、剣咬の虎のチームに一人。昨日塑琉奈をナンパしにきた金髪の男性の姿が。
そして彼も塑琉奈を見て、ポカンと間抜けな顔で此方を指差す。
▼「…知り合いか、塑琉奈?」
「あれだよ!アイツだよ!昨日俺をナンパした奴!!!!」
「はあ!?」
うるせぇな、と付けたし、耳を押さえながらラクサスが聞いてくる。それに塑琉奈はわあわあっと彼の服の裾を掴みながら、ブンブンっと金髪の男性を指差す。
それを聞いて、さっきから向こうを睨み付けてるガジルが声を荒げた。
「ダッハッハッハ!そりゃいい!良い目してやがるぜてめー!なんたって塑琉奈はメスゴリラだかんなー!?」
「やめろガジル、どうせコイツの妄想だ」
「なんだとコラー!!なんで信じてくれないんだっつーの!!つかメスゴリラは余計じゃあああ!!」
同時に、先ほどまでガン垂れたガジルが一気に大爆笑。金髪の男性を指差して腹を抱えて笑い転げる始末。
それに釣られるようラクサスもニヤニヤ笑いながら、塑琉奈の頭をくしゃくしゃに撫でる。当の塑琉奈はというと更に不機嫌顔へ早変わり。
「むぐぅううー…!」
「大丈夫よお母さん、私だったらナンパするもん」
「ジュビアもしますよ!」
「うっ…、我が娘たちは良い子揃いだなぁ…!」
▼「(なーんだ、あの女、妖精の尻尾の奴だったのか)」
ガジルに笑われるのも気にせず、自分の目の前にいる「塑琉奈」っと呼ばれてる彼女を見据える。
そして子供のようにむくれてる彼女に、ぷふっと思わず少し吹き出す。
なら、逆に逃げられて正解だったな。後でとやかく文句言われたりしたらたまったもんじゃねぇ…。
にしても、初めて見る顔だな…新人なんじゃねぇの?
「(まっ、カンケーねぇか)」
どうせ優勝は俺たち“剣咬の虎”。あっ、そうだ。この大魔闘演武終わったら、またあの人を口説いてみるか…
そう思い、楽しみが増えたなぁ…なんて両手を頭の後ろに付けて、俺はローグたちと一緒に歩き出す。
すると、不意に背中にゾクリッと悪寒が走ったのに、俺はキョロキョロ辺りを見回す。
「どうした、スティング」
「んー?なんか悪寒がしてよォ」
「悪寒?武者震いの間違いじゃねぇーのか?」
「そうだね、君の憧れの火竜がいたからね」
オルガに続き、ルーファスがクスクスと笑いながら俺の後ろで口を出す。それにそれもそうだな、っと俺は背中に感じた悪寒を無かったことにした。
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