▼《真夜中遊撃隊、大鴉の尻尾!》

大鴉の…尻尾、だと…?

その放送が聞こえた瞬間、一瞬にして瞼の裏でバババッと昔に起きたことが嫌でも駆け巡る

親父が塑琉奈にしたことが、傷が、血が、声が、涙が…今でも奥底から沸き上がるように映し出される。


「(くそ…)」


同時にビキッと言うような頭の痛みが襲い、思わず瞼を開いた。


▼瞼を開けば、瞼裏にあった昔の鮮明な記憶の映像は消えて、また眩しい日の光が視界へ映る。なのに、ビキッ、ビキッ、と頭痛が酷くなる一方で思わず顔をしかめる。


「…ラクサス」

「…あ?」


あまりの痛さに、此方に声を掛けた塑琉奈の顔も見れず、つい低い声が漏れる。

ああ、そんなつもりじゃねぇのに、と自分の応対に悔やんで唇を噛む。

きっと……塑琉奈の方があれだって言うのによ…っと内に申し訳なさを落とそうとした時、不意にバァンッ!と大きな音と一緒に背中に強い衝撃が走った。


「いっ…!?」

「俺は大丈夫だ!行くぞ、ゴリラ!」


あまりの痛さになんだと思って、反射的に塑琉奈を見やれば、これが予想外にもニカッと清々しい笑顔で。

それを目の当たりにして、痛さで塞いでいた口が横に避ける。同時に、あれほど響いていた頭痛がコロン、と薄れてきて落ちていった。

代わりにジンジンと、背中に熱さのように伝わる痛さ。塑琉奈からもらった渾身の激励。


「…少しは加減しやがれ、メスゴリラ」

「あーん?何か言ったかー?」

「別に」


先に前を歩く他の奴等と共に、ほらほら、と彼女に急かされるように俺は手を引かれていく。

俺は、そんな塑琉奈に内心にだけ感謝を漏らした。






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